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豪中銀、利上げサイクルの終了か、一時停止か?
梅澤 利文
2023/04/05

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概要

金融不安にやや落ち着きは戻ったものの、依然先行きの展開が読み切れない中で開催された豪中銀の理事会で、これまでの利上げから一転して、今回は政策金利の据え置が決定されました。ただし、声明文を見るとインフレ懸念は残ることから、利上げの選択肢も残しています。利上げサイクルの終了と決めつけず、一旦休止に過ぎない可能性もあると身構える必要もありそうです。




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豪中銀、過半の市場予想通り政策金利据え置き、声明文はややハト派的

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は2023年4月4日の理事会で、過半の市場予想通り政策金利を3.6%に据え置くことを決定しました(図表1参照)。豪中銀は昨年5月に金利を0.25%上げた後、3月まで10会合連続、合計3.5%、政策金利を引き上げてきました。豪中銀は声明文で「これまでの金利上昇の影響と経済見通しを評価するための時間を確保」するため据え置きを決めたと説明しています。

為替市場では、豪中銀の発表直後は豪ドル安が進行しました。政策金利を引き上げるとの予想もある中、ややハト派(金融緩和を選好)的な決定などを反映した豪ドル安の動きとみられますが、米国取引時間には豪ドル高に転じています。

豪中銀は月次CPIなどを踏まえ、インフレピークアウトの可能性を示唆

豪中銀は声明文で、これまでの利上げの効果を見るため据え置きを決定したという以外に、次の点もハト派的とみられます。

まず、グローバル経済について従来から低成長を見込んでいたうえに、足元の金融不安の影響で貸出し姿勢を慎重化し金融引き締めとなり、経済成長に向かい風となる可能性を指摘しています。

次に、豪インフレ率についてはピークを付けた可能性が高く、財価格は海外情勢および内需の弱まりを背景に今後数ヵ月間鈍化するとの見通しを述べています。なお、豪統計局が3月29日に発表した2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.8%上昇と、前月の7.4%上昇から鈍化し、市場予想の7.2%も下回りました(図表2参照)。豪物価統計は四半期ベースのCPIが重視されますが、4月26日に月次、四半期ベースが共に発表される予定です。金融政策を占ううえで、改めて物価動向を確認する必要があります。

金融政策の方針についてもややハト派的でした。今後の方針について、これまでの「追加的金融引き締めが必要」から「一定の追加的金融引き締めが必要となるだろう」へと表現が和らいでいるからです。ただし、今後の利上げを否定しているというよりも、金融不安などにより不確実性が高まる状況において、豪中銀は金融政策の選択の幅を広げたという面もあるとみています。

ハト派的な声明文だが、利上げサイクルの終了でない可能性の想定が必要

先物市場などでは豪中銀の利上げ局面は今回で終了との見方が優勢です。しかし豪中銀は中期的なインフレ見通しを変えたわけではなく、利上げの選択肢も残している点には注意が必要です。

例えば、豪住宅価格を見てみると、わずかですが底打ちの兆しが見られます(図表3参照)。もっとも声明文では住宅価格の回復は鈍いと見込んでいるようです。一方で懸念しているのは住宅賃料です。声明文でも過去数年で最も上昇ペースが速いことを指摘しています。


さらに、賃金上昇に伴うサービス価格の上昇には強い警戒感を示しています。雇用環境については緩和の兆し(求人の減少)を認めつつも、「依然として非常にタイトな状況」が続いていると指摘しています。そのうえで、物価と賃金のスパイラル的(連動的)な上昇リスクを今回の声明文で指摘しています。前回の声明文で豪中銀は物価と賃金のスパイラル的な上昇リスクは低いと指摘していただけに、物価への警戒を怠っているわけではない点には注意が必要です。

なお、5日に豪中銀のロウ総裁はスピーチで、昨日の決定は金融政策引き締めサイクルの終了を意味しないと説明しています。今回で利上げは終わりと決めつけず、投資家にはデータ次第でさらなる利上げを想定する姿勢が求められそうです。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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