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- 金曜日を前に、雇用関連データを振り返る
米労働省が月初に発表する米雇用統計は毎回注目度が高いイベントです。一方で、今週はその他の雇用関連指標も発表されました。これらのデータを振り返ると、3月の雇用動向に鈍化の兆しが見られます。このような中、4月7日金曜日に発表予定の米雇用統計の内容に注目が集まりそうです。
ADP雇用者数データは市場予想を下回り、米労働市場の堅調さに変化
米民間雇用サービスADPが2023年4月5日に発表した3月の全米雇用レポートによると、非農業部門の雇用者数(政府部門を除く)は前月比14.5万人増と、市場予想の21万人増、前月の26.1万人増を下回りました。レジャー・宿泊サービスの雇用者数が前月比で9.8万人増、物流は5.6万人増など採用意欲が根強い部門がある一方で、製造業や金融、専門職・ビジネスサービスなどでは前月に比べマイナスと採用が抑えられました。
ADPによると、同じ仕事にとどまった人の賃金は3月が前年同月比6.9%上昇と、前月の7.2%上昇を下回り、約1年ぶりの低い伸びとなりました(図表1参照)。職を変えた人の賃金の伸び率は同14.2%上昇と、前月の14.4%上昇を下回りました。
高水準が続いた求人件数は3月に市場予想を下回った
今週金曜日に米労働省が発表する米雇用統計を前に、その他の雇用関連指標が発表されました。前述のADPの全米雇用レポートや求人件数(図表2参照)などがあげられます。
ADPの全米雇用レポートは雇用者数の調査対象が50万社以上、雇用者数で2500万人以上と幅広いことが特色です。米労働省の雇用統計の動きを必ずしも予測するものではありませんが、製造業や金融など雇用者数が前月比でマイナスとなっている部門があるとのADPの結果は実感に近いように思われます。
また、インフレ懸念の背景として、その強さが強調されていた賃金ですが、依然水準は高いものの、ピークアウト感は明確になりつつあるようです。
次に、4月4日に発表された求人件数(JOLTS)は2月分が993.1万件と、1月の1056.33万件を下回り、失業者数に対する求人件数の比率も2月が1.67と前月の1.86を下回りました。いずれも過去の水準に比べ高く、米労働市場の強さを示すと見られています。ただし、求人件数は過去上昇してきており、今回の低下により長期的な傾向線に回帰したとも見られそうです。
また、振り返ってみると、求人件数のピークは昨年の3月であり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを開始した時期にあたります。利上げペースに比べ求人件数の減速ペースが遅いという面はあったかもしれませんが、効果が全くなかったわけではなさそうです。
ISM非製造業景況指数は米国景気の先行きにやや不安を残す内容
景気と労働市場の動きを見るために、米サプライマネジメント協会(ISM)が5日に発表した3月の米ISM非製造業景況指数によると、3月は51.2と市場予想の54.4を下回りました(図表3参照)。
米国経済の主要部分となる非製造業の先行きが気になる数字です。ISM非製造業景況指数は足元、天候要因などを受け単月の変動が大きくなる傾向がありますが、21年後半をピークに米国景気は活況ながらも緩やかに減速してきたと見られそうです。3月の同指数が急低下した要因に構成指数の新規受注指数の大幅低下があげられます。金融不安の影響が想定されます。もっとも、調査対象のコメントを読むと外食産業などには強気のコメントもあり、動向を判断するには、もう少し先のデータを見る必要がありそうです。
ISM非製造業景況指数の雇用指数は3月が51.3と、2月の54.0を下回りました。依然節目の50を上回っていますが、前月からの落ち込みはやや気がかりです。コロナ禍で人員を削減した娯楽や外食産業、レジャーなどのセクターは経済再開後は雇用増加のけん引役となっていました。今後も雇用の吸収余地は残されているのかもしれませんが、景気動向次第では、雇用のペースダウンも考えられそうです。
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