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- 中国5月のPMI、回復の勢い鈍化が明確に
中国のPMIは今年2月~3月をピークに勢いが鈍化しています。特に製造業PMIは景気拡大・縮小の目安である50を2ヵ月連続で下回っています。PMI構成指数を見ると、新規受注が50を下回っており、先行きの回復も緩やかである可能性があります。中国当局の景気対策は全体的にテコ入れするよりも、選択的な対応にとどまっており、本格的なコンフィデンスの回復に時間がかかることも想定されます。
中国5月のPMIは製造業、非製造業共に市場予想を下回る
中国国家統計局が2023年5月31日に発表した5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.8と、昨年12月以来の低水準で、市場予想の49.5、前月の49.2を下回りました(図表1参照)。建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは54.5と、市場予想の55.2、前月の56.4を下回りました。なお、PMIは景気拡大・縮小の目安は50です。
中国のPMIは事実上のゼロコロナ政策停止時期に相当する昨年12月を底に、23年年初から回復傾向を示していましたが、足元景気回復の勢いは低下しています。中国の1-3月期GDP(国内総生産)成長率は前年同期比4.5%増と堅調なスタートでしたが、回復の勢いは鈍化しています。
ゼロコロナ政策停止による景気回復の勢いは明らかに低下している
中国製造業PMIは2ヵ月連続で50を下回りました。製造業PMIの主な構成指数である生産や新規受注などを見ると2月から3月がピークとなっています(図表2参照)。非製造業PMIも水準に違いはありますが、同時期にピークを迎えている点で同様のパターンとなっています。
中国の景気動向を振り返ると、ゼロコロナ政策の停止を受け飲食サービスや、サービス消費と関連の深いスポーツ・娯楽用品など内需は堅調で、足元でもある程度の勢いは見られます。しかし、雇用指数を見ると、5月分は製造業が47.4、非製造業の雇用は48.4とともに50を下回っています。消費者の信頼感(コンフィデンス)が急速に悪化しているわけではないものの、過剰な消費を抑えた、いわば抑制された消費拡大とみられ、さらなる拡大には雇用、所得環境の改善が求められると思われます。
製造業PMIは輸出の勢い低下も気になるところです。世界経済が減速傾向となる中、中国の輸出活動にも減速が想定されます。輸出向け新規受注の低下に連動して、生産活動の勢いが低下している面も見られます。
なお、中国の輸出は3月に前年同月比14.8%増と急回復しました。4月も8.5%増と底堅さを示しましたが、持続性を占ううえで、6月7日に公表予定の5月データが注目されます。
的を絞った景気テコ入れ策は見られるが、マインドの回復は鈍い
中国の住宅投資といえば、悪いイメージしかありませんが、年初には数字の上では急回復が見られました(図表3参照)。住宅購入需要も事実上のゼロコロナ政策撤廃により感染が拡大、その後終息した時期に不動産販売面積は回復しています。ゼロコロナ政策停止の影響に加え、中国当局が住宅ローン金利を引き下げたことが、当時の回復の背景とみられます。なお、住宅ローンの基準となる5年物の最優遇貸出金利(LPR)は昨年8月に4.3%に引き下げられて以来据え置かれています。しかし、住宅ローンに適用する下限金利を都市に応じて引き下げるなど的を絞った政策で住宅取得の促進を下支えしています。
しかしながら、住宅ローン金利は低水準とはなっていますが、足元の販売を見る限り、回復の勢いは低下したように思われます。
中国景気は良くも悪くも当局の政策運営が景気動向を左右する傾向が見られます。ゼロコロナ政策の停止も幅広く考えれば当局の政策運営にほかなりません。政府のテコ入れが景気回復を全体的に支えるのならばよいのですが、回復に偏りが見られます。例えば固定資産投資は4月が年初来前年比8.5%増となりました。まずまずの数字に見えますが、国営企業がほとんどで、民間企業の伸びは限定的となりました。民間のサービス消費には一定の勢いは残りますが、今後の低下も想定される中、コンフィデンスを維持する政策が求められると思われます。
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