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- インド、総選挙を前に暫定予算を発表
インド財務省は24年度(24年4月~25年3月)(暫定)予算案を発表しました。歳出はインフラ投資などを確保しつつ、補助金を抑えることで、4月から5月に見込まれる総選挙を前にしたバラマキ政策に慎重な姿勢も見られます。また財政赤字の縮小の見通しも示されています。総選挙後に示される本予算でも財政改革路線は維持されるのかが今後の注目点と見ています。
インド財務省の24年度予算案はバランスが取れた内容
インド財務省は24年2月1日、24年度(24年4月~25年3月)(暫定)予算案を発表しました。インドでは、総選挙(24年4月~5月実施見込み)が行われる年の予算案は、慣例的に「暫定」とされ、選挙後に本予算が提出される運びです。
暫定予算案では、 24年度の歳出総額は約47.6兆ルピー(約85兆円)と、前年度から約6%増でした。今回の暫定予算案は、総選挙前にモディ政権がバラマキ政策を盛り込むかが注目されました。農村部や低所得層など票田への支援策に歳出の重点が置かれた面はある一方で、財政再建目標として財政赤字対GDP(国内総生産)比率の改善が盛り込まれました(図表1参照)。
インドの24年度暫定予算案の財政改革の方針を市場も評価
インドの24年度予算案を受け、インド国債市場では国債利回りが低下しました(図表2参照)。歳出にメリハリをつける一方で、24年度財政赤字対GDP比率の目標を5.1%、25年度は4.5%と縮小(改善)させる方針を示すなど、財政改革に前向きな姿勢が示されたことを市場は好感したものと見られます。
歳出規模は23年度の約45兆ルピーから増えているものの、歳出対GDP比率で見ると前年度を下回り抑制されています。これはインドの名目GDP成長率を10.5%と見積もっていることも背景です。
歳出項目では、主な補助金(食料、肥料、燃料)への支出額は24年度が3.8兆ルピーと、23年度の4.1兆ルピー(修正値)を小幅ながら下回る額に設定しています。総選挙前でありながら、バラマキ政策を抑えた格好です。
一方で設備投資などに相当する資本支出を見ると、24年度の伸びは前年比16.9%増となっています。資本支出を対GDP比率で前年度と比べると小幅ながら増加しており、メリハリをつけた印象です。インドは2047年の独立100周年に先進国入りを目指しています。インフラの拡充など経済の高度化に向けた投資は拡大させる方針を維持するものと思われます。
次に財政赤字対GDP比率は2つのサプライズがありました。1つ目は23年度の同比率が当初予算段階で見込まれていた5.9%から5.8%に修正され赤字幅が縮小したことです。同比率の改善は税収の上振れなどが背景と見られます。
2つ目は24年度の同比率の見込みを5.1%としたことです(図表1参照)。市場のコンセンサスよりも改善を見込み、総選挙前としては野心的で、インド政府の財政改革への意気込みを感じさせる数字です。
暫定予算と今後の展開は、格付けに影響する可能性も考えられる
インド政府(新政権)は総選挙が終わった後、24年後半に本予算を発表することになっています。総選挙を前にしても、財政改革に対する姿勢を維持しているのは、選挙に対する自信もあるのかもしれません。しかしながら、選挙の洗礼を受けることで財政改革に対する姿勢に変化がないかは見守る必要があります。
格付け会社も、インドの暫定予算を注目するとともに、選挙の結果と本予算に注目しています。格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスやフィッチ・レーティングスなどが暫定予算の発表後にインドの信用プロファイルについてコメントしています。インド政府の姿勢に好意的ではあるものの、格付け会社は、現段階ではインドに対する慎重な見方を崩していないようです。
インド政府が想定する24年度の財政赤字対GDP比率5.1%について、フィッチの推定は5.4%とインド政府より小幅な改善にとどまるとみています。フィッチは歳入見込みにより慎重であることなどが背景です。
ムーディーズも暫定予算におけるインド政府の財政改革姿勢を認識しつつ、暫定予算の前提条件となっている経済成長などを見守りたい考えで、インドに対する評価は本予算まで先延ばしする考えです。
主要格付け会社(ムーディーズ、フィッチ、S&Pグローバル・レーティング)のインドの長期債格付けは共にBBB-(ムーディーズはBBB-に相当するBaa3)です。投資適格とされる格付けの最下位であり、一段階でも格下げされれば投資不適格級となってしまいます。幸いインドの格付け見通しは安定的で目先の格下げ懸念は少ないとはいえ、インドにとって格上げが望まれるところでしょう。
インド政府の暫定予算は投資と財政改革のバランスを目指した内容と見られます。世論調査では、与党のインド人民党(BJP)率いる選挙連合・国民民主同盟(NDA)が選挙戦を優位に進める中、選挙の洗礼を受けても財政改革路線を維持できるかが今後の注目点です。
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