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- 4月の全国消費者物価指数とインフレ動向
総務省が発表した4月の全国消費者物価指数(CPI)は変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数(コアCPI)が前年同月比で2.2%上昇と、市場予想に一致し、前月の2.6%を下回るなど、インフレ率は概ね鈍化傾向でした。市場のインフレ見通しも当面の緩やかな鈍化傾向が見込まれています。ただし、品目によっては物価上昇圧力要因は残されており、今後の物価動向には注意が必要です。
4月のコアCPIは市場予想通りの結果となった
総務省が5月24日に発表した4月の全国消費者物価指数(CPI)は変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数(コアCPI)が前年同月比で2.2%上昇と、市場予想に一致し、前月の2.6%上昇を下回りました(図表1参照)。
総合CPIは前年同月比で2.5%上昇と、市場予想の2.4%上昇を上回りました。前月は2.7%の上昇でした。生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは2.4%上昇と、市場予想に一致しました。前月は2.9%上昇しました。
今回の発表を受け、日銀が注視するコアCPIは22年4月からおおよそ2年にわたり、前年同月比の伸びが2%以上で推移としたことになります。
4月のCPIにおいて、エネルギー価格は前年同月比で上昇に転じた
4月の全国CPIの特色を部門(エネルギー、食料、サービス、財)別に見ると、①エネルギーは前年同月比0.1%上昇と、23年1月以来、1年3ヵ月ぶりにプラスに転じました。②食料は4.3%上昇と、3月(4.8%上昇)を下回りました。③サービスは1.7%上昇と、3月の2.1%上昇から伸びは鈍化しました。④財は個別品目の動きにとどまりました。
①~③について、注目点は次の通りです。
①エネルギーの主な構成品目はガソリン、電気代、都市ガス代などです。ガソリンは3月が4.3%上昇と、4月の上昇率(4.4%)とほぼ同じでした(図表2参照)。エネルギー全体に占める構成比率が比較的高い電気代も3月とほぼ同じでした。
ガス代は3月の7.1%減から4月は4.2%減と下落率が縮小したことや円安などが4月のエネルギー価格に寄与したと見られます。
②食料は4月が前年同月比4.3%上昇と、3月の4.8%上昇から鈍化しました。ただし、生鮮食品は3月の5.5%上昇から4月は9.1%上昇と高騰しています。総務省の声明文に、価格が急騰した生鮮食品としてキャベツとリンゴが示されています。
外食は23年3月の前年同月比6.9%上昇をピークに鈍化傾向で、4月は2.1%上昇となっています。生鮮食品以外の食料の品目としてチーズやバター等は3月に比べ価格の伸びは鈍化しています。しかし、食料価格に対し、実感として「高い」というのが筆者の印象です。アンケートなどを見ても、そのように感じている人が多いように思われます。
③サービスは4月が前年同月比1.7%上昇と、3月の2.1%上昇から伸びが鈍化しました。インフレ抑制に苦慮している米国ではサービス価格の粘着性がインフレ鈍化を妨げる主な要因となっていますが、日本のサービス価格は比較的落ち着いています。住居費は前年同月比で0.6%上昇にとどまり、保健・医療も1.2%上昇にとどまっています。
なお、高校授業料無償化の影響で授業料等が低下しました。これを含む教育は、3月の前年同月比1.3%上昇から4月は0.9%下落に転じました。このような特殊要因もサービス価格を押し下げたと見られますが、特殊要因を除いても、サービス価格の上昇圧力はやや和らいでいるようです。
日本のインフレ率は鈍化との見通しが大勢だが、気になる点も
日本のインフレ率の今後を占ううえでの注目点を述べます。
エネルギー価格には今後、押し上げ要因が控えています。再生可能エネルギーの普及のため国が電気代に上乗せしている「再生可能エネルギー賦課金」の引き上げが5月の電気代に反映されます。さらに政府による電気代、ガス代価格抑制策の縮小や終了の影響は6月から7月の光熱費を押し上げることが見込まれます。
ホテル代などを含む宿泊料は4月が前年同月比で18.8%上昇と、23年11月をピークに鈍化傾向です。前年4月には全国旅行支援の影響縮小などで宿泊費が大きく伸びていたことの反動が、24年4月の宿泊料を押し下げた面もありそうです。今後の宿泊料は海外からの宿泊者と政府の旅行政策の影響を受ける展開が想定されます。
インフレ動向を見るうえで、最も注目したいのは24年春闘の賃上げ率の雇用者所得への波及と、人件費上昇分の価格転嫁への動きです。また、早くも、25年春闘の賃上げ率も注目されています。
図表1にあるように、日本のインフレ率は伸びが鈍くなっています。市場では、25年にはインフレ率が2%を下回ると大方が見込んでいるようです。ただ、気になるのは足元で期待インフレ率(市場の物価予想を示すブレーク・イーブン・インフレ率)が(2%を下回るも)緩やかながら上昇傾向なことです。期待インフレ率は期間により動きが異なるなど測定の難しさはありますが、仮に期待インフレ率が上昇していると仮定するなら、実質金利の低下により他国と実質金利差が拡大することも懸念されます。その場合、日銀の利上げ時期見通しが前倒しされる可能性も考えられ注意が必要です。
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