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11月FOMC、パウエル議長の会見で今後を占う
梅澤 利文
2024/11/08

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概要

FRBは11月のFOMCで市場予想通り政策金利を引き下げました。注目されたのは今後の利下げ方針で、パウエル議長の会見が注目されました。政策運営はデータ次第、会合(FOMC)毎の決定であるとして利下げの道筋を示しませんでした。なお、米大統領選に関連して財政政策やパウエル議長の辞任に関する質問などがありました。財政政策は今後のテーマであり、かつ受け身であるとの説明でした。




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11月FOMCは全会一致で0.25%の追加利下げを決定した

米連邦準備制度理事会(FRB)は11月6-7日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、市場予想通り、政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き下げ4.5〜4.75%としました(図表1参照)。利下げは前回の9月会合から2会合連続となります。ただし、前回はボウマン理事が大幅利下げに対し反対票を投じましたが、今回は全会一致となりした。

7日の米国債市場では10年国債利回りが前日に比べ大幅に低下しました。6日に「トランプラリー」で国債利回りが急上昇した反動とみられますが、パウエルFRB議長の会見がバランスの取れた内容であったことも安心感を与えた可能性があります。

9月FOMCにおける経済見通しは、既に古さも感じさせる

11月のFOMCの決定内容にサプライズはありませんでした。声明文の主な変更は雇用とインフレについて表現が若干修正されましたが、影響は限定的と思われます。

パウエル議長の記者会見では次回(12月FOMC)以降の利下げの道筋と、米大統領選挙が金融政策に与える影響に関心が集まりました。

まず、次回以降のFOMCで利下げペースを落とす可能性についての質問が出た背景を振り返ると、9月のFOMC参加者の経済見通しと実体経済との違いが挙げられます(図表2参照)。11月のFOMCでは経済見通しの発表がないため、最新となる9月の見通しでは24年のGDP(国内総生産)成長率は2.0%(10-12月期の前年同期比)となってます。7-9月期の実績のGDP成長率は前期比年率で2.8%となり、年初来の成長率は約2.5%で見通しを上回っており、実績は9月のGDP成長率予想を上回る可能性が高そうです。9月の大幅利下げの理由ともなった失業率は見通しの4.4%に対し、10月の失業率は4.1%でした。今夏に労働市場悪化が懸念された失業率の水準(4.3%)を下回っています。このように今後の利下げに疑問が残るデータが発表されたことが背景とみられます。

これに対しパウエル議長は「今回の利下げを踏まえても、政策はなお景気抑制的」なことや、「インフレ目標のために一段の労働市場の冷え込みは必要ない」と述べるなどハト派(金融緩和を選好)姿勢を示し、今回の利下げを支持しました。また、「より中立的(景気を加速も減速もさせない)スタンスに向かう軌道にある」と述べ、利下げ継続の可能性を示唆した点もハト派的とみています。

一方で、米国の一部経済指標に改善を認める発言もしています。また、「中立的(金利)に近づくに伴い、利下げのペースを落とすことが適切になる可能性がある」とタカ派(金融引き締めを選好)的なコメントもしています。

パウエル議長の会見はハト派とタカ派をバランスさせることで、次回以降の政策運営方針(フォワードガイダンス)は、データ次第、会合毎に判断するスタンスであることを強調したようですが、これは今後の利下げの不確実性も示唆しているようです。

財政政策について検討するのは先の話、辞任については明確に否定

米大統領選におけるトランプ氏勝利の直後ということもあり、関連するテーマに記者からの質問が集中しました。財政政策関連と、パウエル議長の辞任の可能性などが主な内容です。

まず、答えが短い、トランプ次期大統領から辞任を求められた場合については、「ノー」とだけ、端的にそれゆえ力強く答えました。また、FRB議長解任の可能性については「法で認められていない」とだけ即答しました。パウエル議長は任期(26年5月)を全うする意思が伺えます。ただし、任期切れは先のこととしても、来年、可能性として後半頃には人事を巡る思惑が賑やかとなり、市場の変動要因となる可能性は排除できないと思われます。

財政政策についてパウエル議長は、「FRBはコメントしない」という原則を述べるとともに、財政政策は立法で成立した後に(FRBの)モデルで分析する」という流れを説明しました。財政政策の影響を語るのはまだ早い点を指摘しつつ、FRBは財政政策については受け身であることも匂わせました。

しかし、トランプ次期大統領の過去の発言だけで財政悪化を、時には過度に、織り込んでしまうのが市場であることもFRBは熟知しているはずです。最近の国債利回りの上昇は財政悪化懸念も一因とみられます。そして国債利回り上昇は住宅ローン金利の押し上げなどを通じて実体経済にも影響を及ぼしているとみられます。これはあくまで一例であって、財政政策への憶測は期待インフレ率など様々な経路で市場に影響する可能性があります。これに対するFRBの情報発信を注視することは今後重要になるとみています。

12月のFOMCについてパウエル議長は雇用統計があと1回、インフレ統計が2回発表されると述べていました。12月の追加利下げは、これらのデータ次第ですが、筆者の印象では、財政政策にはまだ時間があることや、金融政策はなお抑制的と述べていることから追加利下げを否定する要素は少なかったと筆者はみています。また会見では語られませんでしたが、市場の流動性がややタイトとみられることも気がかりです。したがって、12月利下げの可能性は蓋然性が高いとみています。しかしながら、来年の利下げペースについては、市場が想定するほどには利下げが行わない可能性もあるとみています。

 


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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