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- 米CPI、インフレ再加速懸念は杞憂だったようだが
10月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想通りの伸びとなり、前年同月比で2.6%上昇し、エネルギーと食品を除いたコアCPIも3.3%上昇しました。トランプ次期大統領の就任はまだ先のことながら、インフレ的な政策への憶測から、物価の上振れ不安も見られました。ただし、CPI の主要構成指数であるサービス部門の物価の伸びは、一部に注意は必要ですが、全体としてみると鈍化傾向は続いているようです。
10月米CPIは物価上振れも一部で懸念されたが、結果は市場予想に一致
米労働省が11月13日に発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.6%上昇と、市場予想の2.6%上昇と一致し、前月の2.4%上昇を上回りました(図表1参照)。短期的な動向を示す前月比は0.2%上昇となり、市場予想、前月(共に0.2%上昇)と一致しました。
エネルギーと食品を除いたコアCPIは前年同月比で3.3%上昇と、市場予想、前月(共に3.3%上昇)と一致しました。前月比も0.3%上昇と、市場予想、前月(共に0.3%上昇)と一致しました。10月の米経済指標が堅調だったことなどから市場予想からの上振れも懸念されましたが、図表1に示した4つの系列は、市場予想通りの結果となりました。
10月のCPIの前月比の伸びは、ほぼサービス項目で説明される
10月の米CPIを受け米国債市場では政策金利の動きを反映しやすい2年国債利回りが低下した一方で、10年国債利回りなどの長期国債利回りは上昇し、長短スプレッド(利回り格差)が拡大しました。10月CPIが市場予想通りとなり、一時後退していた12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ見通しの復活が短期国債の利回りを押し下げたとみています。一方、インフレ鈍化のペースに懸念が残ることやトランプ次期政権の政策への不安から、長期債利回りは上昇したとみられます。
CPIの前月比の変動をエネルギー、食品、財、及びサービスの4項目に分類し、項目別に寄与度を算出して特色を振り返ります(図表2参照)。
図表2から明らかなように前月比の伸びの大半はサービスで説明されます。反対に食品や財など他の項目の寄与は限定的でした。
食品の伸びは10月が0.2%上昇と、9月の0.4%上昇から鈍化しました。財やエネルギーの前月比の伸びはほぼ横ばいでした。なお、エネルギーは9月(前月比4.1%減)に下押し要因となったガソリン価格は10月も小幅ながら(0.9%減)下落しましたが、エネルギー項目に含まれる電気料金の上昇(1.2%)などと相殺され、エネルギー全体としては横ばいとなりました。
10月の米CPIの伸びを左右した項目はサービスでした。サービスを住居費と、サービス(除く住居費)に分けて内容を振り返ります。
住居費は10月が前月比0.4%上昇と、9月の0.2%上昇を上回りました(図表3参照)。ただし内容を見ると、変動の大きい宿泊費が前月比0.5%上昇と前月を大幅に上回ったことや、最近月ごとの変動が大きい住宅保険等が0.7%上昇したことなどが押し上げ要因となったようです。一方で住居費の大半を占める賃料や帰属家賃の伸びが前月を上回ったことは懸念要因ですが、通常の変動の範囲内ともみられ、鈍化傾向は継続とみています。
10月の米CPIで、住居費を除いたサービスは比較的落ち着いていた
次に、サービス(除く住居費)は10月が前月比0.3%上昇と9月の0.4%上昇を下回りました。サービス(除く住居費)は米連邦準備制度理事会(FRB)も注目する指標の一つで、この指標が鈍化したことは、12月FOMCでの追加利下げに対する市場予想の確度を高めたとみています。
内容を見ても、サービス(除く住居費)を10月に押し上げた主な項目は娯楽や、航空運賃など季節性が大きいものも含まれていたと思われます。
一方で、前年からの伸びは依然高いものの、自動車保険は10月が前月比0.1%の下落となりました。医療サービスは前月比0.4%上昇しましたが、9月の0.7%上昇は下回りました。サービス(除く住居費)は賃金動向に左右されることもあり、鈍化のペースは緩やかですが、鈍化傾向は維持されているとみられそうです。しかしながら、市場でインフレ懸念が残るのは、移民制限など次期トランプ政権が推進するとみられる政策がインフレを悪化させるとみているためです。
米国の10月の実質平均時給は前年比1.4%増でした(図表4参照)。米国の実質賃金は、高インフレ期(22年頃)にはマイナス圏でしたが、昨年からプラスに転じました。ようやくインフレが落ち着き実質賃金の伸びを確保したものの、過去の購買力の喪失を埋め合わせたとは言い難く、最近の米国のストライキでもこの点が不満の一つと無関係ではないようです。こうした中、次期トランプ政権が本当に物価を極端に押し上げる政策を実施するかは慎重に見定める必要があると思われます。
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