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12月の米雇用統計は労働市場の堅調さを示唆
梅澤 利文
2025/01/14

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概要

米労働省が発表した24年12月の雇用統計は、非農業部門の就業者数が市場予想を大幅に上回り、失業率も低下した。賃金の伸びは予想を下回ったが、全体として米労働市場の堅調さが示唆された。この結果を受け、市場の一部にFRBの年内の追加利下げペースが鈍化するとの見方が広がった。筆者は基本的に米労働市場は過熱局面からの正常化と見ているが、リスクシナリオにも注意が必要なようだ。




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12月の米雇用統計は市場予想を大幅に上回り、堅調な結果だった

米労働省が1月10日に発表した24年12月の米雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比で25.6万人増と、市場予想の16.5万人増、11月の21.2万人増(速報値の22.7万人増から下方修正)を大幅に上回った(図表1参照)。季節要因などが非農業部門の就業者数を想定外に押し上げた可能性を踏まえても、米労働市場の堅調さを示唆する数字であった。

12月の失業率は4.1%と、市場予想、前月(共に4.2%)を下回り、米労働市場の堅調さが示された。

平均時給は前年同月比で3.9%増と、市場予想、前月(共に4.0%増)を下回った。前月比は0.3%増と、市場予想の0.3%増に一致したものの、前月の0.4%増を下回った。

堅調な米雇用統計を受け、市場の利下げ見通しは後退した

12月の米雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比で25.6万人増と市場予想を大幅に上回ったことや、失業率が低下するなど堅調さを示す内容であった。この結果を受け、市場の一部は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが鈍化する方向に見通しを修正する動きもあった。

確かに、次の点で12月の雇用統計は堅調だった。就業者数は市場予想を上回ったうえ、3ヵ月移動平均を上回っており、勢いもみられる。就業者数の伸びは、労働統計から推定される就業者数の中立的な水準を上回っているとピクテでは見ている。

就業者数を部門別に見ると、「娯楽・宿泊」、「小売」、「教育・医療」など家計に関連する部門で堅調な伸びが確保された(図表2参照)。また図表2には示されていないが、会計士などを含む「専門・ビジネス」や、「金融」などの就業者数の伸びも堅調であった。

ただし、景況感指数の改善などから回復が見込まれていた「製造業」の就業者数の伸びは鈍かった。また、「小売」の12月の就業者数が伸びた背景は例年よりホリデーシーズンが遅かった影響で年末商戦が遅れ、採用が当月に増えたという特殊要因があった点には注意が必要だ。

次に失業率の低下も米雇用市場の堅調さを印象付けた。また、(27週以上の)長期的失業者の割合が低下したことや、これまで長期化していた失業期間(中央値)が小幅ながら短期化するなど質の面でも失業率に改善が見られた。

堅調な12月の米雇用統計を受け、昨年12月頃から上昇傾向だった市場ベースの期待インフレ率(ブレーク・イーブン率)の上昇に拍車がかかった格好だ(図表3参照)。FRBの利下げに対する市場の見通しも後退(想定利下げ回数の減少)したようだ。市場の織り込みを見ると、雇用統計前は年内の利下げ回数が1~2回程度が見込まれていたが、これが1回程度となったイメージだ。

平均時給で賃金動向を見ると、市場予想は下回るも懸念は残る

一方で、賃金動向を示す12月の平均時給は前年同月比が市場予想を下回るなど、雇用統計の他の指標に比べ力強さに欠ける印象だった。

平均時給の伸び(前月比)を部門別に見ると、製造業などを含む財生産と、サービス業がともに前月比で0.3%増となった(図表4参照)。ただし、サービス部門の中身を見ると、12月の「小売」の平均時給は0.2%減と(特殊要因で)押し下げ要因となっている。しかし、「専門・事業」、「娯楽・宿泊」の平均時給の伸びは各々0.5%、0.4%増と比較的高水準だ。足元の平均時給の伸びは、米労働市場が過熱していた22年~23年頃は下回るも、コロナ禍前の長期平均は小幅上回る水準と筆者は見ている。その意味で米労働市場は過熱局面から、正常化に向かいつつある局面と捉えている。ADP雇用報告など米労働市場に関連した他の経済指標で賃金動向を見ると、概ね緩やかに鈍化を示唆しており、正常化が基本路線と考えている。しかし、今回のサービス部門の賃金動向を見ると、念のためではあるが、再加速はないかなどについて警戒を強める必要がありそうだ。

12月の米雇用統計はFRBの追加利下げの見通しの不確実性を高めたと見ている。これまで年内の利下げは1回から2回と見ていたが、仮に労働市場の強さが続くなら、1回、もしくは利下げ停止の可能性も頭をよぎる。不確実な年内の想定利下げ回数に比べはるかに確実性が高いのは、1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での据え置きだろう。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
シニア・ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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