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- 中国、24年の経済成長でノルマは達成したが課題も
中国の24年10-12月期のGDPは前年同期比5.4%増となり、結果として「5.0%前後」とされる24年の中国政府の経済成長率目標は達成した。しかし、生活実感に近いとされる名目GDPは4.2%増に鈍化した。習近平国家主席の指示で景気対策が強化されたことや、輸出拡大が成長を支えたが需要の先食いの面も見られ、持続的な回復には疑問が残る中、今後の政策対応については内容が問われそうだ。
中国、24年10-12月期のGDPは堅調で、政府目標の成長率を達成
中国国家統計局が1月17日発表した24年10-12月期のGDP(国内総生産)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比が5.4%増と、前期の4.6%増を上回った(図表1参照)。年初来で見ると、5.0%増で、政府目標の「5%前後」は達成したが、伸びは23年の5.2%に及ばなかった。前期比の伸びは10-12月期が1.6%増と、23年1-3月以来の大きさで回復が見られた。
なお、生活実感に近い名目GDPの増加率は24年が4.2%増と、23年の7.4%増から大幅に鈍化し、コロナ禍の20年以降で最も低い伸びにとどまった。中国のインフレ率は低水準での推移が続き、GDPデフレーターは2年連続でマイナスとなった。
中国の駆け込み的な成長の押し上げには、補助金や輸出などが貢献か
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は昨年秋に複数回、経済成長率の年間目標達成するために「あらゆる取り組み」を促す発言をした。習近平主席の呼びかけに応じるかのように、9月以降、中国当局は金融緩和、不動産対策、株式市場への流動性供給などを発表してきた。24年7-9月期の成長率が年初来前年同期比で4.8%と、政府目標の「5%前後」達成に黄色信号が点灯したため、対策が強化された印象だ。
なお、中国当局は家電や自動車の買い替えに対する補助金を昨年4月末から5月に導入した。しかし効果が不十分として7月に家電購入の補助金の適用割合を拡大するなど景気対策を行ってきた。これに加えて秋から追加的な景気対策の後押しがあったこと、さらに堅調な輸出という追い風もあって政府目標は達成されたというのが筆者の見立てだ。GDPの主な押し上げ要因が小売りなど政策対応や輸出であったことを月次データで確認しよう。
まず、消費を反映する小売売上高は12月が前年同月比で3.7%増と、市場予想の3.6%増、前月の3.0%増を上回った(図表2参照)。数字は平凡な伸びだ。しかし、内訳をみると、買い替えに補助金が適用される家電製品は39.3%と、補助金の効果が見えなかった昨年7月の2.4%減に比べ大幅に改善した。消費動向を反映し、全体の1割程度を占める飲食店収入(外食)は12月が2.7%増で、7月とほぼ同水準の伸びを示した。これに比べ、景気テコ入れ策の恩恵を受けた電化製品の突出ぶりがうかがえる。
なお、電気自動車(EV)などの新エネルギーを含む自動車は前年同月比で0.5%増に過ぎなかった。EVなどには補助金が適用されたものの、商用車などが不振で全体としては低い伸びにとどまった。
消費以外で中国の24年のGDPを支えたのは輸出だったが、主要なけん引役はEVなどだ。12月の輸出は前年同月比10.7%増と、前月の6.6%増を上回り堅調で、輸入の伸びを上回ったことから純輸出はプラスであった。輸出の項目を見ると、新エネルギー車は約39%増、集積回路等も約22%増と、けん引役であったことがうかがえる。
中国は政策頼みの成長が今年も続きそうだが、中身の検討も必要だろう
輸出で新エネルギー車や集積回路が好調であったことから、これらの品目は工業生産の押し上げ要因でもあった。12月の工業生産は前年同月比で6.2%増と前月を上回ったが、けん引役は新エネルギー車が43.2%増、集積回路等が36.7%増と突出していた。この背景はトランプ次期大統領の就任前の駆け込み的な輸出があるとの見方が市場では一般的だ。
また、消費のけん引役は補助金による家電などの買い替えだった。このように輸出と消費のけん引役は需要の先食い、という面もありそうだ。したがって、景気悪化を防ぐ効果は、しっかり見られたが、持続的な景気回復要因となり得るかについては疑問も残る。
しかし、中国は当面、金融緩和や財政政策頼みの成長となりそうだ。中国の経済運営の方針を策定する中央経済工作会議が昨年12月に開催され、今年の経済運営における金融緩和と財政政策の活用が報道で示唆された。財政政策の規模などは今後の発表を待つ必要があるが、トランプ次期大統領の就任後、関税引き上げなどの影響が懸念されるが、中国当局はこのマイナスの影響を相殺するよう、財政政策を繰り出し、今年についても、24年程度の成長確保を目指すかもしれない。先週、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表したが、IMFは中国の25年の成長率を4.6%と、財政政策支援などを反映して、前回(24年10月)から0.1%上方修正した。
中国は不動産問題という懸案に加え、今年は米中対立問題がトランプ次期政権により、さらに悪化する懸念もある。中国当局は政策対応を拡大することで悪影響を相殺し、昨年並みの成長を確保する意向と思われる。景気底割れを防ぐ点で政策対応は必要だが、単なる対処療法とならないか、中国の今後の政策を注意深く見守りたい。
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