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- 「不確実性」の3月FOMCへの影響
FRBは3月のFOMCで政策金利を市場予想通り据え置き、量的引き締め(QT)を4月から減速すると発表した。注目されたFOMC参加者の見通しでは、25年末の政策金利水準見通しは前回の見通しと変わらなかったが、利下げ1回や据え置きの見通しが増えた点で金融引き締め感も強まった。パウエル議長は会見でハト派寄りの面もあったが、不確実性が大きい間の金融政策は様子見が基本姿勢となりそうだ。
FRBは3月のFOMCで市場予想通り据え置きとした
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月18-19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利(フェデラルファンド(FF)金利)の誘導目標を、市場予想通り、据え置くことを決定した。今回のFOMCでは、保有する米国債などの資産を圧縮する量的引き締め(QT)を4月から減速することが発表された。
FOMC参加者の政策金利水準の見通し(ドットチャート、図表1参照)によると、25年の利下げ見通しは2回(0.25%を2回)が最多で、前回(12月FOMC)と変わらないが、利下げが1回との予想が4人、0回も4人おり、金融引き締め感が強まった。
パウエル会見はトーンとしてはややハト派的だが、決め打ちはまだ先だろう
3月のFOMCはハト派(金融緩和を選好)、もしくはタカ派(金融引き締めを選好)と簡単に決めにくかった。ドットチャートや、FOMC参加者の経済見通し(図表2参照)などにはハト派、タカ派、双方の要因が含まれていたためだ。FRBのパウエル議長の会見は「不確実性」を強調した点で、ややハト派的とも見られるが、基本的に「利下げを急ぐ必要がない」姿勢に変化がなかったとも言えそうだ。
まず、ドットチャートを振り返ると、市場が便宜的に使用する中央値による年内利下げ想定回数は2回で、前回のFOMC(24年12月)参加者見通しから変化がなかった。今回のFOMC直前の参加者のコメントや、最近のインフレ再加速懸念から、想定利下げ回数が減る可能性もあっただけに、中心値が同じだったのはハト派的な印象をもたらした。しかし、25年末の政策金利の予想水準の分布に目を移すと、今回は年内1回の利下げが4人、据え置きが4人と、前回の見通しにおける年内1回利下げ3人、据え置き1人に比べ、タカ派方向にシフトした。いずれにせよ、不確実性の中で利下げ回数を変えるような見通しはたてにくかったようだ。
次に、FOMC参加者の経済見通しは景気悪化見通しというハト派と、インフレ見通し引き上げというタカ派が入り混じる、スタグフレーション的な見方となった。25年~27年の経済成長率見通しが引き下げられた一方で、インフレ動向を示す米個人消費支出(PCE)物価指数の見通しは25年を中心に上方修正された(長期の見通しは据え置かれた)。会見でパウエル議長はインフレ見通しの上方修正について関税の影響がどの程度なのかについて説明を避けたが、足元の修正が大きかったことから、関税の影響は小さくはないのだろう。
FOMC後のパウエル議長の記者会見はややハト派的な印象だった。そのキーワードとして「不確実性」と「一時的」が挙げられる。
市場ではサーベイ(調査)ベースの期待インフレ率の上昇が注目されていた。ミシガン大学が発表した3月の消費者調査で1年先の予想インフレ率が4.9%と急上昇した(図表3参照)。FRBが利上げを開始した22年3月に迫る水準だ。しかし、パウエル議長はサーベイデータ(全般)に見られる変動を重視しない姿勢を示した。これらのサーベイから、回答者が関税の影響を懸念してインフレ予想を引き上げたが、パウエル議長はこのようなリスクは一時的の可能性もあると重視しない姿勢だった。
パウエル議長はインフレが長期的な見通しに収束するのであれば、(足元の不確実なデータで)金融引き締めを行うのは正しくはないとのニュアンスを示唆している。FOMC参加者のインフレ見通しは25年を中心に(一時的に)上方修正されているに過ぎない見通しであることを考え合わせれば、ハト派寄りの会見であったと見られよう。
ただし、そもそも関税政策は「不確実」なのだから、短期的に今後のインフレ動向が明確となる(パウエル議長はそう期待しているようだが)のかどうかも不確実なはずだ。であるならば、当面の基本姿勢は「利下げを急ぐ必要はない」になりそうだ。
今回のFOMCではQT減額も発表されたが、疑問も残る決定であった
今回のFOMCでは保有する米国債などの資産を圧縮する量的引き締め(QT)を4月から減速することを発表した。米国債の毎月の償還額の上限を250億ドルから50億ドルに引き下げる一方、住宅ローン担保証券(MBS)の減額ペースは350億ドルで現状維持となった。1月のFOMCでQTが議論されたが、意外と早く決定が発表された。
足元、MBSの(期限前)償還が減少しており、月次で350億ドルの減額は未達となっている。将来的に保有債券を国債中心とする方針から国債の減額ペースのみを変更したと思われるが、MBSの実際の減額ペースが変わるものではないだろう。
今回のQT減速はウォラー理事が反対するなど憶測を生みやすい決定だった。1月のFOMCを受け、市場では年内QT停止も予想されていた。しかし、発表内容からすると減速した形でQTを当面続ける可能性がありそうだ。
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