Article Title
分散投資実践編②~主要な資産の値動きと金利の関係~
2023/04/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

POINT
●主要な資産の値動きと金利の関係性について、大まかな傾向を把握しておくことは重要です。
●急激な金利上昇局面では、分散投資の効果を十分に得られない可能性があります。




Article Body Text

■  金利変動と主要な資産価格の関係

金利の変動は多くの資産価格に影響を与える要因の一つです。資産価格の変動には複合的な要因が関係するため、金利の変動が直ちに資産価格に影響を与えるとは一概には言えませんが、主要な資産の値動きと金利の関係性について、大まかな傾向を把握しておくことは重要です。

一般的には、金利上昇は株式や債券などの主要資産の価格に対して下落圧力として作用すると考えられています(図表1)。金利が上昇する代表的な要因として、物価上昇を抑制するための金融政策として実施する政策金利の引き上げ(利上げ)があります。

ここで、金利について簡単に確認をしたいと思います。金利には大きく、短期金利と長期金利に分類できます。短期金利とは満期までの期間が1年以内のものをいい、代表例としては中央銀行が定める政策金利があげられます。長期金利は、満期までの期間が1年超のものをいい、代表例としては10年国債利回りがあげられます。短期金利は中央銀行の金融政策の影響を色濃く受けるのに対し、長期金利は投資家の需給によって市場で決定されます。資産価格は、短期金利と長期金利の両方の影響を受けます。


図表1: 金利の上昇と主要な資産の値動きの関係 注1

注1 :上記は一般的な理論や過去の経験則等を元に作成したものであり、実際の市場において上記のような価格変動が生じることを保証するものではありません。例えば、好景気が続いた場合の金利上昇では企業業績向上への期待などから、金利とともに株価も上昇するケースがあります。
※代表的な理論株価算出の手法として、企業のキャッシュフロー(分子)を金利を基にした割引率(分母)で割って求める方法が用いられています。


■  急激な金融引き締めは分散投資効果を低下させる

安定的な資産運用の手法の一つに、分散投資があげられますが、効果的な分散投資を行っていても、十分にその効果が得られない場合があります。それは、急激に金融環境が変化するような局面で、直近では2022年が該当します。

2022年は、インフレの高進を抑えるため、多くの国・地域の中央銀行が積極的に金融引き締めを行った歴史的な年でした。米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)が過去に例を見ないペースで利上げを行い、その結果、米国株式と米国国債の両方が下落するという事態に見舞われました。

米国株式と米国国債の値動きの相関の変遷を見てみると、ほとんどの期間で両資産の相関はマイナスとなっています(図表2)。つまり、両資産は逆の値動きをしていたということです。しかし2022年は、両資産の相関が大きく上昇しています。これは、FRBによる急速な利上げによって、米国株式と米国国債が同時に下落したことを示しています。

このように急激な金融引き締め局面では、幅広い資産の価格が同時に下落してしまう可能性があり、たとえ幅広い資産に分散投資を行っていても、その効果を十分に得られないといったことが起こりえます。

しかし、だからと言って、分散投資が効果的でないという訳ではありません。過去を見てみると、各資産間の相関は一時的に高まっても、経済・金融環境が落ち着くにつれ、徐々に長期的な平均値に収れんしています。重要なことは、急激に金融環境が変化する局面では、幅広い資産の価格が同じ方向に動き、一時的に分散投資の効果が低下する可能性があるということを認識することです。したがって、そのような状況に直面しても、分散投資が効果的ではないと断じるべきではないと考えます。


図表2:米国株式と米国国債のリターンの相関と米国の政策金利の推移
(月次、期間: 2000 年 1 月末~ 2022 年 7 月末、米ドルベース)

※米国株式: MSCI 米国株価指数、米国国債: FTSE 米国国債指数 。ともにトータル・ リターンベース
※米国株式と米国国債の相関( 12 ヵ月ローリング)は、ある時点から遡って 12 ヵ月間の両資産間の相関の推移を示したもの
1999年 1 月末から 2022 年 7 月末までの期間の、両資産の月次リターンを基に算出
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ・ジャパン作成


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら

MSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。



関連記事


日付 タイトル タグ
日付
2023/03/30
タイトル 分散投資実践編① ~長期資産運用の手段としての分散投資~ タグ
日付
2023/05/11
タイトル 分散投資実践編③ ~効率的な資産の組み合わせ~ タグ
日付
2023/05/25
タイトル 分散投資実践編④ ~分散投資の効果~ タグ
日付
2023/06/09
タイトル 分散投資実践編⑤ ~分散投資の効果2~ タグ
日付
2023/06/22
タイトル 分散投資実践編⑥ ~日本の投資家のためのアセット・アロケーション~ タグ
日付
2023/07/06
タイトル 分散投資実践編 ⑦ ~大幅下落局面でも投資を継続する重要性~ タグ
日付
2023/07/19
タイトル 分散投資実践編 ⑧ ~長期投資の実現を妨げる行動ファイナンス上のバイアス~ タグ
日付
2023/08/04
タイトル 分散投資実践編 ⑨ ~金融政策が与える金融市場への影響~ タグ
日付
2023/08/17
タイトル 分散投資実践編 ⑩ ~長期積立・分散投資の効果~ タグ
日付
2023/08/30
タイトル 分散投資実践編 ⑪ ~アセット・アロケーション・ファンドの優位点~ タグ

ESG投資や新興国投資について学びたい方へ

コラム

もっと詳しく学びたい方へ

図解で学ぶ投資のトピック

投資の基礎を学びたい方へ

投資を始める前に知っておきたいこと