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- 分散投資実践編⑥ ~日本の投資家のためのアセット・アロケーション~
⚫ 海外の資産を組合わせたポートフォリオの分散効果を評価する際は為替の影響に注意する必要があり、為替を考慮した資産の組合わせや、為替ヘッジを活用したリスクコントロールが重要です。
■ 為替変動が与える相関係数への影響
今回は、日本の投資家が、海外の資産を含めて分散投資を行う際に注意すべき為替の影響についてご説明いたします。まずは相関係数への影響です。相関係数とは2種類のデータの関係を示す指標で、-1から1で示されます。分散投資実践編④(Vol.93)でご説明しましたが、効果的な分散投資を行うためには、相関係数の低い資産同士を組合わせることが重要となります。日本の投資家が海外の資産に投資をする場合、現地通貨ベースの資産間の相関と円ベースの資産間の相関の違いを把握する必要があります。なぜなら、この2つの相関は為替の影響によって大きく異なる可能性があるからです。具体的に見ていきましょう。
米国株式と米国国債を例にすると、米ドルベースでは相関係数が-0.19と低く、関係のない値動きをする、つまり分散効果が大きい傾向があることが分かります。一方、円ベースでの相関係数は+0.37に上昇し、分散効果が低下してしまいます(図表1)。このように相関係数は、為替の影響によって現地通貨ベースと円ベースでは大きく変わる可能性があり、そのことを認識した上でポートフォリオを構築する必要があるといえます。
図表1:代表的な資産の相関係数
月次、期間:1998年12月末~2023年5月末
※米国株式:MSCI米国株価指数、先進国株式:MSCI世界株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数、米国リート:MSCI米国REIT指数、米国国債:FTSE米国債指数、世界国債:FTSE世界国債指数
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
■ 為替変動がポートフォリオのリターンに与える影響
次に、為替変動がポートフォリオのリターンに与える影響についてご説明いたします。米国株式に$10(10%)、米国国債に$90(90%)投資した分散投資ポートフォリオにおいて、米国株式が$8に下落し、米国国債が$92に上昇したとします。米ドルベースで見た場合、ポートフォリオの価値は$100のまま変わりません。しかし、ドル円レートが$1=100円から80円に円高になった場合、円ベースのポートフォリオの価値は10,000円から8,000円へ減少します(図表2)。
図表2 :現地通貨ベースと円ベースでのリターンの違い
図表3で、分散投資ポートフォリオの米ドルベースと円ベースのパフォーマンスと米ドル円レートの推移を示していますが、ポートフォリオのパフォーマンスはベース通貨の違いで大きく異なることが分かります。注目すべきは、円ベースのポートフォリオのパフォーマンスが米ドル円レートに大きく影響される点です。直近のポートフォリオのパフォーマンスは、米ドルベースでは下落していますが、円ベースでは上昇しています。これは円安の効果です。一方で、2016年ごろは、米ドルベースではプラスであるものの、円ベースではマイナスになっています。これは円高による影響です。
図表3:米国株式と米国国債を組合わせた分散投資ポートフォリオと為替レートの推移
月次、期間:2015年1月末~2023年5月末、分散投資ポートフォリオ(米国株式10%+米国国債90%)は2015年1月末を100として指数化
このように、日本の投資家が安定したリターンに期待して分散投資を考える際には、為替変動を考慮し円ベースでの相関係数を確認して資産の組合わせを行うほか、リスク許容度に応じて為替ヘッジを活用し値動きを抑える工夫をすることなどが必要です。
※米国株式:MSCI米国株価指数、米国国債:FTSE米国債指数、米国株式10%+米国国債90%は米ドルベース、円ベースともに月次でリバランス
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ・ジャパン作成
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