Article Title
グリーンの次にブルーボンド
梅澤 利文
2021/09/16

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

グリーンボンドは地球温暖化対策など幅広いプロジェクトへ取り組むための資金調達として発行される債券です。一方、ブルーボンドは海洋保護や持続可能な漁業、廃棄物処理など、水が関係するプロジェクトに資金使途を限った債券というのが基本的なイメージです。グリーンボンドもブルーボンドも環境・社会・ガバナンス(ESG)債のサブカテゴリーの位置づけです。



Article Body Text

ブルーボンド:アジア開発銀行が海洋環境などの改善にブルーボンドを発行

アジア開発銀行(ADB)は2021年9月10日、アジア・太平洋地域の海洋関連プロジェクトへの融資を目的とした、オーストラリア(豪)ドルおよびニュージーランド(NZ)ドル建てのデュアル・トランシェ・ブルーボンドを発行しました(図表1参照)。ADBとして初のブルーボンド発行となりました。

ADBが発行したブルーボンドはオーストラリア(豪)ドル建とニュージーランド(NZ)ドル建の2本建てで構成され、それぞれ別の保険会社が購入しました。

ブルーボンドの発行例はグリーンボンドに比べ小さいが、関心は高まりつつある

グリーンボンドは地球温暖化対策など幅広いプロジェクトへ取り組むための資金調達として発行される債券です。一方、ブルーボンドは海洋保護や持続可能な漁業、廃棄物処理など、水が関係するプロジェクトに資金使途を限った債券というのが基本的なイメージです。グリーンボンドもブルーボンドも環境・社会・ガバナンス(ESG)債のサブカテゴリーの位置づけです。

アジア開発銀行(ADB)としては、今回のブルーボンドが初めての案件となりますが、ブルーボンドは3年ほど前に発行されています(図表2参照)。最初のブルーボンド発行と言われるのはセーシェル政府で、ブルーボンド国債を発行しました。世界銀行などが発行を支援しています。

セーシェル政府によると、ブルーボンドで調達した資金は海洋保護や漁業マネジメントなどに使用するとしています。アフリカの島嶼国(当初国)であるセーシェルは海に囲まれており、海洋資源の保護や、持続的な海洋ビジネスは重要なプロジェクトです。このように、ブルーボンドは海洋の汚染から養殖など持続的な海洋ビジネスを対象としています。海岸線の長さ等から東アジアやインド太平洋地域にもメリットが大きいとの指摘もあります。

グリーンボンド同様に、ブルーボンド発行の枠組みがあります。今回のADBでは(拡大された)グリーン&ブルーボンド・フレームワークの下で当該債券が発行されています。このフレームワークには発行原則、対象プロジェクト、評価プロセスとグリーンもしくはブルーボンドの資金調達、資金の配分、モニタリングとレポートに該当する基準、コンプライアンス、外部評価とセカンドオピニオンの7項目が定められています。グリーンもブルーも大枠は似ていますが、対象プロジェクトが海洋関係などとするのがブルーボンドというイメージです。

ADBは19年に」海洋保全と持続可能なブルー経済のための行動計画」(行動計画)を策定し、24年までに50億ドルの投資を目指しています。今回のADBのブルーボンドは行動計画の一環と位置づけられています。

なお、ADBの行動計画は、国際連合が15年に採択した17の目標(及び169のターゲット)で構成される持続可能な開発目標(SDGs)の14番目の「海の豊かさを守る」項目の達成を支持するものです。今後の動向が注目されます。

ブルーボンドの今後を占う上で課題を見ると、グリーンボンド同様に、ブルーボンドが対象とするプロジェクトなどの定義についてはこれからの展開を見守る必要がありそうです。また、海洋プロジェクト固有の問題も指摘されています。例えば、プラスチックごみの問題を考えてみても、それが別の国から流れてくる場合もあり他国の協力が求められます。河川であっても日本の場合は概ね国内問題ですが、複数の国にまたがる場合、解決はやはり協力が必要です。もっとも、これらの問題は昔から存在していた国家間の問題であって、ブルーボンド自体の問題ではないでしょう。

ブルーボンドがきっかけで、解決が困難であった問題が一歩でも解消に向かうことを期待します。


関連記事


日銀植田総裁は想定よりハト派だった

スイス中銀はマイナス金利へと向かうのか?

米短期金融市場とQTの今後を見据えた論点整理


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら