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- 米雇用統計を踏まえたFOMC参加者のコメント
23年1月の米雇用統計は市場参加者の金融政策見通しに修正を迫る内容でした。雇用統計後の金融当局の発言も、金融引き締め姿勢長期化の必要性などを訴える内容です。ただし、政策金利が引き締め水準を超えるとみられる中、慎重さも見え隠れしています。市場には金融引き締めの長期化に半信半疑な面もあり、当局との神経質な対話が続くことも想定されます。
FOMC参加者は1月の米雇用統計の結果に驚きを示す
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2023年2月7日、ワシントン経済クラブの対談イベントに登壇しました(図表1参照)。2月3日に公表された1月の米雇用統計が非常に強い数字であっただけに、その発言内容が注目されました。
なお、1月の米雇用統計後の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の主な発言を振り返ると、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁やFRBのパウエル議長のコメントにあるように素直に驚きの強さであったと表明しています。
今週はパウエル議長やウォラー理事らの発言が注目された
1月の米雇用統計から最近のFOMC参加者の発言までの間の米国債利回りの動きを整理します。2月1日に発表されたFOMCで政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利は4.25%-4.50%に設定されました。米雇用統計前、市場では次の3月FOMCでさらに0.25%引き上げ、4.50%-4.75%で利上げ停止(ターミナルレート)を見込む動きも見られました。しかし、米雇用統計を受け、米国債利回りは急上昇し(図表2参照)、ターミナルレートは12月のFOMCが示唆した5.00%-5.25%(5.125%)へと見通しを修正する方向となりました。こうした中で、今週はパウエル議長やウォラー理事の発言が注目されました。
当局の発言の真意は何か
最近の当局者の発言は、金融引き締めの長期化を支持しておりタカ派(金融引き締めを選好)寄りと報道されています。確かにニューヨーク(NY)連銀のウィリアムズ総裁が数年間は金利を景気抑制的な水準に維持する必要があるかもしれないとの見解を述べたことや、ウォラー理事の発言はタカ派姿勢と見られます。
もっとも、昨年夏からの米国債利回り上昇の背景となった、当局による市場の楽観姿勢をやや強引
に是正するというよりも、昨年12月のFOMCの予測を指針とするよう市場に求めているに過ぎないようにも思われます。
1月の米雇用統計が公表される前、市場は12月のFOMCが示唆するより低いターミナルレートと、年内利下げ開始(FOMCは年内引き下げなし)という2つの点でハト派(金融緩和を選好)寄りで、当局の見解と異なります。先物市場などの織り込み具合を見ると、雇用統計を受けターミナルレートは引き上げられましたが、市場は依然として年内利上げの可能性を残しているように思われます。
ご本人の意図と市場の解釈は少し違うようですが、パウエル議長は会見でインフレ鈍化という言葉を繰り返し使っています。依然高水準ながら、インフレ率の低下傾向は明確となっています。また、足元のFFレートは引き締め水準を超えているのは明らかと見られます。ターミナルレートに達した後、長期にわたり同水準を維持できるのか疑問も残ります。当局のけん制も、昨年12月を最良の指針と述べるにとどめているような印象です。
当局が重視する指標に注意も必要
パウエル議長は労働市場のさらなる強い状況などを条件に、金融引き締めを強化すると述べています。1月の米雇用統計で失業率は3.4%に低下するなど、非常に強い面が見られます。この強さが続くようであれば確かにタカ派姿勢をさらに強める可能性は高まりそうです。
米雇用市場以外に最近の指標で気になるものを挙げると、期待インフレ率の一部について足元、上昇傾向なことです(図表3参照)。FRBがインフレに危機感を強めた昨年の水準は大幅に下回ることや、調査ベースの期待インフレ率は低下傾向なことなどもあり、緊急性は低いですが、今後の変化に注意は必要です。なお、最近のFRBの調査ではコロナ禍後、賃金動向に対する期待インフレ率の影響が大きくなっている可能性も指摘されていることも気になります。
消費者物価指数の押し下げ要因となっていた中古車などを含む財価格の先行きにも注意が必要です。中古車価格に下げ止まりが見られるからです。ガソリン価格も下落傾向に底打ち感が見られます。インフレ鈍化のプロセスが始まったと見られるものの、その道のりは長くなる可能性もあります。
インフレ抑制最優先から、引き締め過ぎへの注意を求められる段階にシフトしたと見られる中、FRBの金融政策には当面、神経質な対応が求められそうです。
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