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- 米長期金利低下 イスラエル情勢以外の要因も
中東情勢の緊迫化を受けて米10年国債利回りは急低下する展開となったが、その背景には相次ぐ連銀総裁のハト派発言もある。当レポートでは、イスラエル・ハマス衝突に関する要点整理と連銀総裁発言によるフェデラル・ファンド金利先物への影響について考察するとともに、今後の注目点についても解説する。
米10年国債利回りは急低下
米10年国債利回りが足元で急低下している。きっかけはパレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模な攻撃だ。中東情勢の緊迫化を受けて、10月10日の米国債市場では米10年国債利回りが一気に4.65%まで急低下し、翌日も4.56%へさらに低下する展開となった(注:10月9日の米国債券現物市場はコロンバス・デーで休場)(図表1)。
しかし、マーケットは今回の事態を比較的冷静に受けとめているようだ。そもそもイスラエルの原油・天然ガス生産量の世界シェアは限定的であり、世界的なエネルギー・ショックに波及するリスクは極めて低い。このまま局所的な戦争に留まれば、グローバル経済への影響も限定的と考えるのが自然だろう。ただし、今回のハマスによるイスラエルへの攻撃にイランが関与したとなれば話は別だ。最悪の場合、イスラエルとイランの軍事衝突へ発展するリスクがあり、イスラエルの同盟国である米国が戦闘部隊の更なる増強を求められる可能性がある。また、イランは原油・天然ガス生産量において世界シェアが比較的高く、米国がイラン産エネルギーに対して強硬姿勢を取れば、エネルギー・ショックを引き起こす可能性も高まる。米国防総省は原子力空母ジェラルド・フォードを東地中海へ派遣し、抑止力の強化を図っているが、今後の展開を注意深く見守る必要があるだろう。
相次ぐ連銀総裁のハト派発言
米10年国債利回りが急低下した背景には、相次ぐ連銀総裁のハト派発言もある。これまで米10年国債利回りが急ピッチで上昇していたこともあり、ダラス連銀のローガン総裁は10月9日、追加引き締めの必要性が低下した可能性について言及したほか、ジェファーソンFRB(米連邦準備制度理事会)副議長も同日、米国債利回りの上昇を通じた金融環境の引き締まりが、今後の金融政策に影響を及ぼすと発言した(図表3)。また、翌日にはアトランタ連銀のボスティック総裁が、これ以上の利上げは必要ないとコメントしたほか、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も、金融環境の引き締まりによってこれ以上の利上げは必要ないとの立場を取った。さらに、ボストン連銀のコリンズ総裁も11日、現行の引き締めサイクルがピークに近い、またはピークかもしれないと言及した。
一連の連銀総裁のハト派発言によって、市場関係者の政策金利見通しにも変化が起こっている。フェデラル・ファンド金利先物のイールドカーブを見ると、先週金曜日時点と比較して直近は年内の追加利上げ観測が幾分後退しており、来年の利下げ幅の予想も若干拡大した(図表4)。このことから、米10年国債利回りの低下には政策金利見通しの変化も加わっていることが推察される。
10月19日にはパウエルFRB議長講演が控える
10月19日にはパウエルFRB議長が「ニューヨーク経済クラブ」で講演を行う予定だ。テーマは不明だが、次回10月31日-11月1日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)のヒントになる可能性があることから、市場関係者は講演内容に神経質になることが想定される。仮に他の連銀総裁同様、パウエルFRB議長からもハト派発言が飛び出せば、米国株式市場は素直に好感する展開になるだろう。しかし、そのハト派発言の裏に中東情勢の悪化があれば、本質を見誤ることにもなりかねない。
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