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- 2022年10月のバイオ医薬品市場
バイオ医薬品関連企業の株価動向
10月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。
2022年10月のバイオ医薬品株式は、前月に続いて世界の株式市場を上回るリターンとなりました。インフレの高進が経済成長を鈍化させ、米国やユーロ圏の景気後退(リセッション)入りが避けられそうにない環境の影響を受けやすいセクターとは対照的に、業績が景気変動の大きな影響を受けにくいバイオ医薬品セクターは、収益性の高い優良企業を中心に堅調な動きとなりました。一方、創業から日が浅く、医薬品開発の初期段階にある中小銘柄の株価は、長期債に似た特性を持つことから、金利変動の影響を受けて相対的に軟調となりました。
個別銘柄では、アムジェン(米国)、ギリアド・サイエンシズ(米国)、アルジェニクス(オランダ)等の株価が大きく上昇しました。アムジェンは、肥満症治療薬候補が、開発の初期段階にあるにもかかわらずアナリストの注目を集め株価が上昇しました。肥満症治療薬については今後の治験データの発表が注目されますが、新薬の開発が成功したとしても、相次ぐ大型薬の特許切れと後発医薬品(ジェネリック医薬品)の発売が同社にとってネガティブ材料となっています。アルジェニクスは重症筋無力症治療薬ビブガルトの販売が好調で、極めて良好な決算を発表しました。また、ギリアド・サイエンシズなどの収益性の高い大型銘柄は相対的に好調なパフォーマンスとなりました。一方、インスメッド(米国)等は株価が大きく下落しました。
今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では良い兆候がみられ始めています。M&A(合併・買収)の動きは、年初に予想した通り大幅に増加しています。資金調達環境の厳しさも緩和しつつあり、さらなるM&Aの案件が期待されます。また今後数ヵ月間に、重要な治験結果の発表を控えていることも注目されます。米国のインフレ抑制法案が議会を通過したことについては、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナス影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。
医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。
バイオ医薬品関連企業の売上高は新型コロナ・ワクチンの売上減などが影響し相対的に低い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
一方、今後の売上高の伸びについては、2023年以降、モデルナ(米国)、ビオンテック(ドイツ)の新型コロナウイルス・ワクチンの売上が大幅に減少するとの見方を背景に、米国企業や先進国企業を下回ると予想されています。(図表7参照)
ただし、バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬の承認後の業績寄与が期待されています。
売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しました。(図表9参照) 足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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