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- 2022年11月のバイオ医薬品市場
■ バイオ医薬品関連企業の株価動向
11月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は上昇しました。
2022年11月の株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを減速させるとの見方が強まる中、上昇しました。2023年にはインフレ率が大幅に低下するとの期待が強まって、景気の先行きに対する見方が改善されたように思われます。このような環境下、バイオ医薬品株式については、優良大型株が市場全体に連動して大幅に上昇する一方で、中小型株は小幅の上昇に留まりました。株価が上昇した銘柄としては、ホライゾン・セラピューティクス(アイルランド)、キニクサ・ファーマシューティカルズ(バミューダ)、アミカス・セラピューティクス(米国)、アストラゼネカ(英国)等が挙げられます。ホライゾン・セラピューティクスは、予想を上回る決算と業績見通しの引き上げなどが好感され株価が大きく上昇しました。キニクサ・ファーマシューティカルズは、心膜炎治療薬アルカリストの7-9月期を通じた好調な販売状況が好感され、株価が大きく上昇しました。アミカス・セラピューティクスは、米食品医薬品局(FDA)による同社の中国工場の検査が実現することで、ポンペ病治療薬候補の承認が得られることが期待され株価が上昇しました。アストラゼネカは、目立った材料がない中、優良大型株相場の恩恵を受けて上昇しました。
株価が下落した銘柄としては、ナテラ(米国)、アイオバンス・バイオセラピューティクス(米国)等が挙げられます。ナテラは、前期に続いて決算は堅調でしたが、株価は増資の発表が嫌気され下落しました。アイオバンス・バイオセラピューティクスは、黒色腫治療薬候補のFDA申請を再度延期する旨の発表を行いました。
■ 今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では良い兆候がみられ始めています。M&A(合併・買収)の動きは、年初に予想したとおり大幅に増加しています。資金調達環境の厳しさも緩和しつつあり、さらなるM&Aの案件が期待されます。また今後数ヵ月間に、重要な治験結果の発表を控えていることも注目されます。米国のインフレ抑制法案が議会を通過したことについては、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナスの影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。
医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。
■バイオ医薬品関連企業の売上高は新型コロナ・ワクチンの売上減などが影響し相対的に低い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
一方、今後の売上高の伸びについては、2023年以降、モデルナ(米国)、ビオンテック(ドイツ)の新型コロナウイルス・ワクチンの売上が大幅に減少するとの見方を背景に、米国企業や先進国企業を下回ると予想されています。(図表7参照)
ただし、バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬の承認後の業績寄与が期待されています。
■売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSR も低下しました。( 図表9 参照)足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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