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- 2022年12月のバイオ医薬品市場
■ バイオ医薬品関連企業の株価動向
12月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
2022年12月の株式市場は、イベントやニュースに左右される展開となり、株価が上下両方向に大きく振れる中、月間では下落となりました。特にテクノロジー銘柄の下げが際立ちました。中小型株が相対的に小幅な下落にとどまる中、中小型株の多いバイオ医薬品株式も相対的に小幅な下落にとどまりました。
株価が上昇した銘柄としては、ホライゾン・セラピューティクス(アイルランド)、インスメッド(米国)、ゼノン・ファーマシューティカルズ(カナダ)、サイトカイネティックス(米国)、ベンティクス・バイオサイエンシズ (米国)等が挙げられます。ホライゾン・セラピューティクスは、アムジェン(米国)による買収を受けて株価が大きく上昇しました。インスメッドは10月の資金調達時のデータ開示を巡る投資家の懸念が薄れたことが寄与しました。その他、ゼノン・ファーマシューティカルズ、サイトカイネティックス、ベンティクス・バイオサイエンシズ等の中小型株は市場全体を上回るリターンをあげました。
株価が下落した銘柄としては、アーカス・バイオサイエンシズ (米国)、ベラス・ヘルス(カナダ)、フェイト・セラピューティクス(米国)等が挙げられます。アーカス・バイオサイエンシズは、発表されたTIGIT抗体の治験結果そのものはさほど悪くなかったものの、事前の期待が高すぎたことなどが影響しました。ベラス・ヘルスは特段の理由がなく売られましたが、2023年には治験の予定が少ないことから、一部の投資家が保有株を売却し、含み益を確定させた可能性も考えられます。
■ 今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では良い兆候がみられ始めています。M&A(合併・買収)の動きは増加傾向にあり、引き続き案件が期待されます。新薬の開発では、2023年は遺伝子治療の承認が期待される他、免疫学系、循環器系、中枢神経系が注目されます。またがん領域では製薬会社は細胞療法に強い関心を寄せ続けています。一方、IPOは依然として控えめで、市場全体の流動性が再びプラスに転じるまで、その窓は開かれないと思われます。米国のインフレ抑制法案が議会を通過したことについては、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナスの影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。
医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。
■バイオ医薬品関連企業の売上高は新型コロナ・ワクチンの売上減などが影響し相対的に低い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+6.4%の相対的に高い売上高の伸びが期待されています。(図表7参照)
■売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しました。(図表9参照)
足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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