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2023年6月のバイオ医薬品市場
2023/07/24

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概要


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■ バイオ医薬品関連企業の株価動向

6月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は、小幅に上昇しました。

人工知能(AI)関連銘柄が注目を集め、大型ハイテク銘柄を牽引役に上昇した株式市場に対して、バイオ医薬品株式は出遅れる結果となりました。景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ・セクターから景気敏感セクターへの資金流出が続く中、ヘルスケア・セクター全体が相対的に軟調な展開となりました。米国の長期金利の上昇が逆風となったほか、2024年の米大統領選を巡る不透明感が強まる環境も、バイオ医薬品株式の選好意欲を損なう一因となっています。また複数の期待外れの治験結果も嫌気されました。

株価が上昇した銘柄としては、ムーンレイク・イミュノセラピューティクス(スイス)、チヌーク・セラピューティクス(米国)、インスメッド(米国)等が挙げられます。ムーンレイク・イミュノセラピューティクスは、化膿性汗腺炎(HS)治療薬候補のフェーズ2治験で事前予想を上回る良好な結果を発表したことが好感され、株価が上昇しました。

HS治療薬は、競合他社の少ない炎症・免疫(I&I)市場において、注目を集めています。IgA腎症(IgAN)治療薬候補のフェーズ2治験について既に良好な結果を発表しているチヌーク・セラピューティクスは、ノバルティス(スイス)による買収(買収総額:35億ドル)の発表が好感され、株価が大きく上昇しました。
インスメッドは、年内に公表される予定の治験結果を先取りした買いで株価が上昇しました。

株価が下落した銘柄としては、サイトカイネティックス(米国)等が挙げられます。サイトカイネティックスは、今後、心不全治療薬候補のフェーズ3治験が予定されており、良好な結果が期待されていますが、特段の理由なく株価が下落しました。



■ 今後のバイオ医薬品市場見通し

足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候がみられています。M&A(合併・買収)の動きは大型案件が相次いで見られており、この傾向は継続するものと期待されます。新薬の開発では、2023年は遺伝子治療の承認が期待される他、免疫学系、循環器系、中枢神経系が注目されます。また、がん領域では製薬会社は細胞療法に強い関心を寄せ続けています。米国のインフレ抑制法案が議会を通過したことについては、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナスの影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。

長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。






■バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに

バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+8.4%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)




■売上高の伸びに沿って株価も上昇

過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)



■バリュエーション

バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しました。(図表9参照)

足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。


 

 

 

                                                                    

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