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- 2023年8月のバイオ医薬品市場
■ バイオ医薬品関連企業の株価動向
8月のナスダック・バイオテクノロジー指数(ドルベース、配当含まず)は下落しました。
世界の株式市場全体が下落する中、バイオ医薬品株式市場も下落しました。株式市場は、中国経済の成長見通しが不透明なことや、底堅い米国経済を背景とした金利高止まりの長期化懸念などを背景に、不安定な展開となりました。バイオ医薬品セクターは、薬価交渉を巡る動向や、米連邦取引委員会(FTC)によるアムジェン(米国)のホライゾン・セラピューティクス(米国)買収に関する提訴の行方が懸念され、多くの投資家から敬遠された状況が続きました。薬価交渉については、米保健福祉省が交渉対象とする処方薬のリストを初めて発表したことから、状況がかなり明確になり、リストに含まれたバイオ医薬品は、競合薬の圧力を受けて既に価格が下落している1件のみでした。
株価が上昇した銘柄としては、アムジェン等が挙げられます。アムジェンは、肥満症治療薬の分野で競合する他社が良好な治験結果を発表したことを受けて、同社の肥満症治療薬候補に対する期待が大きく高まったことなどが好感され、株価が大きく上昇しました。
株価が下落した銘柄としては、セージ・セラピューティクス(米国)等が挙げられます。セージ・セラピューティクスは、大うつ病性障害(MDD)と産後うつ病の治療薬候補について、産後うつ病については米食品医薬品局(FDA)から承認を得られたものの、MDDでは承認を得られなかったことが失望され、株価が大きく下落しました。
■ 今後のバイオ医薬品市場見通し
足元、バイオ医薬品株式市場では、良い兆候がみられています。M&A(合併・買収)の動きは大型案件が相次いで見られており、この傾向は継続するものと期待されます。特にフェーズⅡで良好な治験結果が示された治療薬候補を有するなど買収後のリスクの低い銘柄が注目されます。新薬の開発では、遺伝子治療や免疫学系、循環器系、中枢神経系、がん領域などが注目されます。米国のインフレ抑制法案については、財務上の重大な影響はないものと思われますが、M&Aのターゲットとされる企業が変わる可能性や、がん領域および低分子化合物におけるイノベーションへのマイナスの影響、治療薬について新たな適応拡大を追求するかどうかに関連した戦略の変更が予想されます。
長期的には、医薬品に関連する医療費についての議論が大きく変化していることがわかります。いくつかの国では治療の有効性に応じて医療費を支払う制度(価値に基づく医療)が利用されていますが、処方薬で最大のマーケットである米国においても、従来の出来高払い方式ではなく、同様の制度を求める声は、ますます大きくなっています。医薬品企業と同様に政府、規制当局、保険業者は、医薬品の開発においてイノベーションを抑制することなく、医薬品の費用を効率的に管理することができる妥協案を見つけることを必要としています。最も重要な利害関係者である患者は、破産のリスクにさらされることなく、高品質の治療を受けたいと考えています。これは、治療薬の開発といった科学的側面だけでなく、ビジネスモデルや先進的な思考、価値に基づいた契約といった側面においてもイノベーションを生む良い機会となると考えます。
■ バイオ医薬品関連企業の売上高は新薬承認後の業績寄与などにより相対的に高い伸びに
バイオ医薬品関連企業の売上高は、新興国の企業を上回って堅調に成長してきました。(図表6参照)
バイオ医薬品関連企業については、引き続き多くの有望な治療薬候補を有しており、新薬承認後の業績寄与が期待されていることから、今後3年間で年率+10%の相対的に高い売上高の伸びが予想されています。(図表7参照)
■ 売上高の伸びに沿って株価も上昇
過去の実績では、バイオ医薬品関連企業の株価は、売上高の伸びとともに上昇してきたことがわかります。(図表8参照)
■ バリュエーション
バイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目されて2021年夏頃までは株価が上昇し、PSR(株価売上高倍率)で見たバリュエーション(投資価値評価)の水準も上昇していましたが、2021年秋以降はFDAの承認申請に対する予想外の決定などがマイナス要因となったことに加え、2022年半ばにかけてナスダック市場の下落が大きくなる中、ナスダック・バイオテクノロジー指数も下落したことから、PSRも低下しました。(図表9参照)
足元は、良好な治験結果の発表や、再びバイオ医薬品企業の業績が景気動向に左右されにくい特性などが注目され、PSRは上昇に転じつつあります。
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