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- デジタル通貨リブラ、公表して1ヵ月、非難はやまず
構想の公表から1ヵ月、デジタル通貨リブラに対する懸念や批判は高まる一方の印象です。ただ、リブラは新興国に多い銀行口座をもたないユーザーに、手軽に金融インフラを提供できる可能性があります。デジタル通貨への流れや、それを支える基幹技術の発展は止めるべきでないという声は根強いものの、理想の実現には想定より、時間がかかる可能性もあります。
デジタル通貨「リブラ」:構想に対する懸念表明が相次ぐ
米フェイスブック(FB)が計画するデジタル通貨「リブラ」について、2019年7月17日の下院金融委員会で厳しい追及が行われました。例えば、ウォーターズ委員長はリブラ計画がプライバシーおよび国家安全保障面に甚大なリスクをもたらすと述べています(図表1参照)。
前日に行われた米上院銀行委員会や公聴会でも、リブラに対し集中砲火が浴びせられ、議員の中には、火遊びで家を火事にしてしまう幼児にFBを例える(遠慮の無い)発言も飛び出すなど懸念の深さが浮き彫りとなりました。
どこに注目すべきか:リブラ、デジタル通貨、
構想の公表から1ヵ月、デジタル通貨リブラに対する懸念や批判は高まる一方の印象です。ただ、リブラは新興国に多い銀行口座をもたないユーザーに、手軽に金融インフラを提供できる可能性があります。デジタル通貨への流れや、それを支える基幹技術の発展は止めるべきでないという声は根強いものの、理想の実現には想定より、時間がかかる可能性もあります。
リブラのプロジェクトを率いるフェイスブック幹部のデービッド・マーカス氏は17日の下院公聴会で、監督当局者が計画内容に納得するまで、リブラは始動しないと言明しました。FBは20年前半の始動を計画していましたが、見直しを迫られそうです。
もっとも、ここまで批判が強いのは、リブラの潜在力の現われとも見られることから、主な批判内容を振り返ります。
リブラは米ドルや円建の国債等を裏付けにすることで安定した価値が期待されます。暗号資産と呼ばれるようになったビットコイン等とはこの点が異なります。リブラはより通貨に近いことから、中央銀行の立場を脅かすことが懸念されています。リブラは同様のサービスが競合することから先進国での普及は限定的かもしれませんが、FBの計画通りなら新興国での利用が拡大する可能性があります。新興国での普及を仮定し、ある新興国でその国の通貨安が進行した場合、ドルなど様々な通貨で構成されるバスケットに連動するリブラの保有拡大が想定されます。その場合、中央銀行のコントロール喪失や、最悪、金融危機も想定され、さらには新興国の危機が先進国へ波及することも懸念されます。
また、報道などで繰り返し指摘されていますが、消費者保護やマネーロンダリング(資金洗浄)への対応も気がかりです。世界の主な中央銀行がデジタル通貨発行の議論をする中でも通貨を(現金のように)匿名とするべきかどうかの議論が見られました。FBはリブラの匿名性が念頭にあるようで、当局の関心も高く、少なくとも本人確認(KYC)、マネーロンダリング対策が金融機関同様の水準で求められると思われます。ただ、その場合、今度は新興国でリブラを普及させる計画の足かせとなる問題に直面する可能性もあります。
リブラに加盟する企業や団体に銀行の名前は今のところ見当たりません。銀行免許取得の大変さを嫌ったのか、事情はわかりませんが、銀行抜きで「通貨」を名づけたものを扱う計画に理解を求めるのは、余計に困難かもしれません。
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