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- 米中通商交渉、異例ずくめの対応だが
米トランプ大統領が8月1日唐突に、中国からの輸入品3,000億ドル相当に10%の関税(対中追加関税第4弾)を課す意向を表明してから、市場の動揺が続いています。中国の人民元安進行と、米国が中国を為替操作国に指定するなど緊張は高まっています。米中の対応は異例ずくめとなっています。
米財務省:人民銀行の基準値変更を受けた人民元安で中国を為替操作国に認定
米財務省は2019年8月5日(日時はすべて現地時間)、ムニューシン財務長官が中国を為替操作国と判断したと発表しました。米国が為替操作国を指定するのは、クリントン政権時の94年に中国を認定して以来です。ムニューシン長官は中国の政策が作り出した競争上の不公正を除去するため国際通貨基金(IMF)と協力すると述べています。
中国の中央銀行の人民銀行は毎朝、取引きの目安となる基準値を発表していますが、5日朝発表された基準値(対ドル)は先週2日よりも0.33%人民元安となる1ドル=6.9225元の水準に設定、人民元安が進行しました。
どこに注目すべきか:制裁関税、為替操作国、資本逃避、通貨戦争
米トランプ大統領が8月1日唐突に、中国からの輸入品3,000億ドル相当に10%の関税(対中追加関税第4弾)を課す意向を表明してから、市場の動揺が続いています。中国の人民元安進行と、米国が中国を為替操作国に指定するなど緊張は高まっています。米中の対応は異例ずくめとなっています。
そもそも、ことの発端であるトランプ大統領の追加関税の意向表明のタイミングを想定していた市場関係者は少なかったように思われます。また、報道ベースですが、米中通商問題でタッグを組んできたライトハイザー通商代表部(USTR)代表やムニューシン財務長官らの反対を押し切り、中国への事前通告無しに制裁関税を発動したとも伝えられています。報道の通りとすると、事前通告をしないのは外交上異例の対応と思われます。
中国を為替操作国に指定したのも異例です。通常、為替操作国の公表は半期に1度の報告で行われます。足元の半期報告は5月末で、このとき中国を為替操作国と判断しておらず、わずか2ヵ月で判断を変更したこととなります。
中国の対応も従来と異なります。制裁関税の意向表明に対し農産物輸入停止と、人民元安での対応が報道されています。もっとも、人民銀総裁が中国は為替を貿易問題の手段として使わないと表明していますが、5日の基準値変更により、防衛線と見られていた1ドル=7.0人民元をあっさり突破しており、何らかの判断があったと見られます。
ただ、極端な人民元安は中国からの資本逃避を加速させる恐れがあります。15~16年頃の人民元安局面(図表1参照)で中国当局は、外貨売り人民元買い介入の結果、外貨準備を大幅に減らしています(図表2参照)。資本逃避のリスク覚悟で通貨安政策をさらに加速させる可能性は高くないように思われますが、注意は必要です。
なお、制裁関税の発動時期として表明された9月1日は米国のレーバーデーの祝日の頃で、大統領選挙はこの時期に前後して選挙戦が本格化するといわれています。特に米国にとっては、連日下落を続ける現在のような株式市場よりは安定した市場が本来は望ましいものと思われます。今のところ制裁関税への支持は米国内でも高くないようです。
中国にとっても、制裁関税の回避、市場の安定が望ましいはずで、今後、為替介入など泥沼の争いに発展させるよりは、時期は不明ながら、落ち着きを模索する動きも想定されます。冷静かつ慎重に状況判断する必要があります。
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