- Article Title
- コロナを反映した世界銀行の経済見通し
世界銀行の世界経済予想で、新型コロナウイルスの影響が示されました。なお、4月に国際通貨基金(IMF)が同様のレポートを公表しています。IMFが今年の世界全体の成長率をマイナス3.0%と見込んでいたのに比べ、厳しい予想となっています。また、今回の世界銀行のレポートで、グローバル・バリュー・チェーンへの影響の分析が示されています。
世界銀行:世界経済見通しを大幅に下方修正、戦後最悪の成長率を見込む
世界銀行は2020年6月8日に最新の世界経済見通し(GEP)を公表しました。世界経済は今年、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴い、第2次世界大戦後で最大の落ち込みとなると予測しています。20年の世界成長率はマイナス5.2%、新興・途上国経済はマイナス2.5%の成長と、統計開始の1960年以降で最悪の成長率を予想しています(図表1参照)。
なお、前回1月の予想では、世界経済は+2.5%の成長を見込んでいました。
どこに注目すべきか:世界経済見通し、IMF、エボラ熱、GVC
世界銀行の世界経済予想で、新型コロナウイルスの影響が示されました。なお、4月に国際通貨基金(IMF)が同様のレポートを公表しています。IMFが今年の世界全体の成長率をマイナス3.0%と見込んでいたのに比べ、厳しい予想となっています。また、今回の世界銀行のレポートで、グローバル・バリュー・チェーンへの影響の分析が示されています。
世界銀行がIMFの4月の予想に比べて厳しめとなっている背景を先進国と新興国についてみてゆきます。
先進国ではユーロ圏の20年の成長率をマイナス9.1%と、IMFのマイナス7.5%より悲観的に見ています。世界銀行のレポートでは、ユーロ圏について新型コロナウイルスの感染拡大がイタリアやスペインなどを中心に拡大したこと、その対応として厳しい封鎖政策がとられたことを指摘しています。また、ユーロ圏の国々が観光産業に依存する比率が比較的高いことも理由としてあげています。
新興国では中国は世界銀行の成長率予想は20年が1.0%と、IMFの1.2%と同水準を予想しています。
一方で、ロシア、インド、そしてブラジルと4月以降に新型コロナウイルスの感染が拡大した国の成長率を低く見込んでいます。例えば、インドはIMFが+1.9%を予想していたのに対し、世界銀行は20年の成長率をマイナス3.2%に減速すると予想しています。ロシア、そして特にブラジルについても世界銀行はマイナス幅を拡大させています。
なお、世界銀行の1月と6月の成長率予想の差異は、ほぼコロナ感染抑制の経済封鎖コストに該当するとも考えられます。より精緻化したうえで、コロナ対策の定量化への利用も想定されます。もっとも、コロナ対策のコストにはグローバル・バリュー・チェーン(GVC)への影響など複雑な関係の解明も必要ですが、今回のGEPではGVCの分析が紹介されています。
世界銀行が分析対象とする国や地域について、コロナ感染の成長への影響をGVCも考慮して行っています。簡単に内容を振り返ると、主に4つの分野①雇用、②貿易コスト、③海外への移動、④サービス業、への影響を算出しています。
例えば、雇用については、工場閉鎖や社会的距離政策の影響で3%程度の雇用減少を今後1年について見込んでいます。貿易コストは、国境閉鎖、検疫など検査のコスト増大、輸送費用の増加などで「貿易コスト」が増加したと説明しています。数値はなじみにくいのですが、エボラ出血熱のときは10%の増加であったのに対し、今回はその約2.5倍の水準をモデルで推定しています。
過去、世界経済がGVCを進めてきた理由は在庫を減らし、生産性を向上させることが背景で、あたかも世界的にジャスト・イン・タイムが構築される格好となっていました。コロナ感染拡大は、思いもよらぬ形で、GVCに暗い影を投げかけました。一部にGVC見直しの動きも見られるなど改善は必要ながらも、世界銀行はGVCの役割を維持する考えと見られます。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。