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- 世界銀行の経済見通しで示された課題
今回の世界銀行の世界経済見通しは、主要な国際機関の中で今年最初に公表された見通しであり、また新型コロナウイルスのワクチン接種が開始された後の経済予想となっています。21年の世界の成長率は4.0%と、前回(20年6月)の4.2%から小幅下方修正されました。なお、新興国に限れば5.0%と前回から上方修正する一方で、課題も指摘しています。
世界銀行の世界経済見通し:21年の成長率見通しを小幅下方修正
世界銀行は2021年1月5日に、半期に1度(前回は20年6月)の世界経済見通し(GEP)を公表しました(図表1参照)。
世銀は21年の世界経済の成長率を4.0%と、前回予想から0.2%引き下げました。米国とユーロ圏の成長率予想を下方修正したことが主な背景です。一方で中国の21年の成長率は7.9%と前回から1%上方修正しました。
どこに注目すべきか:世界経済見通し、商品輸出国、新興国QE
今回の世界銀行の世界経済見通しは、主要な国際機関の中で今年最初に公表された見通しであり、また新型コロナウイルスのワクチン接種が開始された後の経済予想となっています。21年の世界の成長率は4.0%と、前回(20年6月)の4.2%から小幅下方修正されました。なお、新興国に限れば5.0%と前回から上方修正する一方で、課題も指摘しています。
まず、21年の世界の成長率の特徴を振り返ります。図表1に示した前回からの変化幅を見ると、先進国は下方修正された一方で、新興国は上方修正となっています。特に米国はマイナス0.5%、ユーロ圏はマイナス0.9%と下方修正されています。世界銀行はレポートでこの背景について、新型コロナウイルスの感染再拡大による経済活動の制限により、年初の成長率低下を反映させたと説明しています。日本の足元の感染拡大については消費の勢いを低下させたという表現にとどまっています。
なお、20年の上方修正は、昨年6月に予想を公表した時点の過度な悲観の修正と淡々と述べています。
次に、新興国全体の21年の成長率予想を見ると5.0%と前回から0.4%上方修正されています。新興国を産油国や資源国など商品輸出国と、中国のような非商品輸出国で分類すると、非商品輸出国(プラス0.6%)の上方修正が新興国を底上げした印象です。しかし、この背景は中国の回復が大半で、中国を除いた非商品輸出国の21年の成長率は3.9%と世界銀行は見込んでおり、前回からの上方修正はプラス0.1%に留まります。新型コロナウイルスを早期に収束させた中国の成長は新興国の中でも際立っています。
なお、産油国などの商品輸出国の見通しが悪いわけではなく、世界銀行も商品価格が昨年の春から大幅に上昇し、最近では安定していると見ています。商品輸出国の20年の成長率はマイナス4.8%でしたが、今年はプラス3.0%が見込まれています。一方で商品輸出国の成長を抑える要因として、旅行などの回復にはまだ時間がかかることから、エネルギー需要の本格的な回復に懐疑的なこと、債務状況が悪化していることから歳出に消極的になる可能性などを指摘しています。
今回の世界銀行の予想で、新型コロナウイルスのワクチンについての前提は今年の年末までに先進国と中国、インド、ロシアの国民の半数程度がワクチンを接種できると想定しています。仮にワクチン接種の割合が5%程度にとどまるリスクシナリオでは、世界の成長率は1.6%にとどまると予想しています。
世界銀行の今回の経済見通しは、新型コロナウイルスの動向次第という面がある一方で、成長の抑制要因として債務の拡大などを今後の課題と指摘しています。特に財務基盤が一般にぜい弱な新興国の公的債務が対GDP(国内総生産)比でこの1年に急増していることを指摘しています。また新興国の中央銀行が資産(主に国債)購入政策(QE)の導入を迫られた点も詳しく分析しています。世界銀行はQEにより新興国の金融市場の安定に貢献したとプラス評価をする反面、出口戦略が明確でないなど、透明性の欠如などを指摘しています。
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