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ニュージーランド中銀、目先慎重も将来の正常化を視野
梅澤 利文
2021/05/26

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概要

ニュージーランド(NZ)は、4月に国債の購入額を減額(テーパリング)したカナダに続いて、金融政策の正常化を開始することが想定される国の1つです。ただ、NZの足元の景気の回復が鈍くなっています。しかし今回の会合の結果を見る限り、NZ中銀は将来的に正常化を見据えているようです。



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ニュージーランド準備銀行:足元の減速を見込むも、来年の利上げ開始を視野に

ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は、2021年5月26日、市場予想通り政策金利を0.25%に据え置くと発表しました(図表1参照)。また、大規模資産購入プログラム(LSAP)の規模も1000億NZドル(約7兆9300億円)で維持することも決定しました。

またNZ中銀は21年1-3月期のGDP(国内総生産)成長率予想を2月時点の前期比でマイナス0.3%から、5月時点の予想は同マイナス0.6%と下方修正しました。一方で、政策金利については、制約のない政策金利というラフな目安ながら、22年の利上げ開始を示唆しました(図表2参照)。

どこに注目すべきか:下方修正、正常化、NZ中銀、テーパリング

ニュージーランド(NZ)は、4月にテーパリングを実施したカナダに続いて、金融政策の正常化を開始することが想定される国の1つです。ただ、NZの足元の景気の回復が鈍くなっています。しかし今回の会合の結果を見る限り、NZ中銀は将来的に正常化を見据えているようです。

NZ中銀の金融政策の発表を受けた市場の反応では為替市場でNZドル高が進行(図表1参照)し、タカ派(金融引締めを選好)的と判断したようです。

もっとも、1-3月期のGDP成長率予想を下方修正するなどハト派(金融緩和を選好)的な面も見られます。ただ、成長見通しを引き下げた背景は新型コロナウイルスの影響で観光産業などの戻りが鈍かった点などが要因と指摘しています。従って当面景気動向には警戒姿勢ながら、世界的にワクチン接種が進めば景気回復するとの期待が声明に示されています。次の政策金利の想定はよりタカ派です。

試算値として算出される制約のない政策金利の水準は24年が1.78%と、来年の利上げ開始を想定すると急速な引き締めが示されています。しかしこれはあくまで試算で、フォワードガイダンス(将来の政策の方針)でないことをNZ当局は繰り返し注意していますが、前回、前々回と比べ、利上げの時期は早まっているように思われます。正常化が将来的に意識されそうです。もっとも正常化ではテーパリングが先行すると思われます。テーパリングに若干コメントします。

カナダ中銀は4月に週次の購入額を減額するとしてテーパリングを公表しました。次はどの国かも興味のあるところです。英国、NZ、オーストラリアなどが候補です。ただ、テーパリングもしくは債券購入政策は国によって異なり、テーパリング時期の特定には注意も必要です。例えば、イングランド銀行(英国中銀)は5月の会合で週次の債券購入額を減額しましたが国債購入の総額は維持したため、テーパリングではないと説明しています。NZ中銀の債券購入政策も独特で、最大で1000億NZドルの購入枠を定め購入額を柔軟に運営しています。購入額は国債の発行状況などに応じて変化するため、購入額の変化を見ても、テーパリングなのか良くわからない面もあります。恐らくNZの場合は購入総額の減額をもってテーパリングと判断すべきと考えています。債券購入策は各国が最適と考える運営方法を選択しているため制度に多少の違いが見られます。どこが次のテーパリングかというと競争のようにも聞こえますが競技のように公平なルールがない点に注意も必要です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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