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- 利上げを支持する堅調な米雇用統計と将来の注目点
米国の3月雇用統計は総じて見れば堅調で、米雇用市場が順調に回復していることが示唆されたと見ています。例えば失業率は3.6%とコロナ禍前の水準に迫っています。人手不足などを反映して賃金の上昇も高水準です。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策正常化を支持する内容と思われます。ただ、今後の展開には変化の兆しも見られます。
米雇用統計:3月の雇用統計は失業率、賃金上昇などに雇用市場の回復が見られる
米労働省が2022年4月1日に発表した3月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月比43.1万人増と、市場予想の49.0万人増、2月の75.0万人増(速報値67.8万人増から上方修正)を下回りました。失業率は3.6%と、市場予想の3.7%、前月の3.8%から低下しました。
平均時給は前月比0.4%増と、市場予想に一致し、前月の0.1%増を上回りました。前年同月比では5.6%増と、市場予想の5.1%増、前月の5.2%増を上回りました。
どこに注目すべきか:雇用統計、娯楽・接客、労働参加率、インフレ
米3月の雇用統計を振り返れば、米労働市場の回復が随所に見られます。3月の非農業部門の就業者数は市場予想を6万人程度下回っていますが、1月は2.3万人、2月は7.2万人と合計9.5万人程度上方修正されており、3月の市場予想を下回った分を埋め合わせる格好となっています。
就業者の増加を部門別に見ると、コロナ禍で大幅な人員削減が見られた娯楽・接客部門が前月比での伸びを確保しています(図表1参照)。また、情報処理や製造業なども堅調で雇用に幅広い回復が見られます。
ただ、コロナ禍の配送需要などを受け堅調に雇用を伸ばしてきた運輸・倉庫は前月比ほぼ横ばいでした。一時的な落ち込みなのか、今後の動向に注意が必要です。
22年1-3月期の就業者数の伸びは平均して56.2万人となることから堅調な回復を維持していると見られます。
失業率は3.6%と、コロナ禍前の19年2月の3.5%に接近しています。その上、経済的理由によるパートタイムを失業者に含めた失業率(U6)も3月は6.9%と前月の7.2%から低下していることや、働ける人(生産年齢人口)に占める労働力人口(働く意思のある人)の割合で示される労働参加率は上昇(図表2参照)するなど、質の点でも良い失業率の低下(労働市場の改善)と見ています。
所得環境も堅調です。時間当たり賃金は前月比0.4%増と市場予想に一致する結果でしたが、前月分は同0.0%増から同0.1%に上方修正されています。また、前年同月比では5.6%増と市場予想、前月を共に上回りました。人手不足などを背景に、賃金上昇圧力が続いています。
米3月の雇用統計が公表された後の米金融当局の発言としてサンフランシスコ連邦準備銀行のデイリー総裁を取り上げると、インフレ率の上昇と雇用統計の強さを踏まえ5月に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5%の利上げを支持する考えを表明しています。早期のインフレ対応を求める声がFOMC内でも強まっている様子であり、市場予想を見ても、5月に加えて6月のFOMCでも0.5%の利上げが相当に織り込まれていると見られます。
雇用市場の堅調な回復から、少なくとも今年前半の金融引締めは従来に比べかなり早いペースで進められると見ています。ただ、雇用統計は今はまだ回復途上ですが、来年に向けペースダウンを想定させる兆しも見られます。例えば労働力人口ですが、3月は約1億6441万人とコロナ禍前の水準に接近するも、下回っています。また過去からのトレンドと比べれば概ね200万人超下回っており、現状は大幅な人手不足と見られます。ただ、足元の労働力人口の増加ペースは、過去の増加ペースを上回っています(図表2参照)。仮に最近の増加ペースが継続するならば、労働力人口は来年を目処に過去のトレンドに回帰する可能性も想定されます。物価など他のデータの動向次第ながら、人手不足の解消が賃金上昇圧力を若干和らげる可能性にも注目しています。
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