- Article Title
- こちらも注目、ECB議事要旨
先日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨ほどには注目されていませんが、欧州中央銀行(ECB)も最新の議事要旨を公表しました。ユーロ圏もインフレ率の上昇は深刻で、利上げ開始の議論に積極的であることが明らかとなりました。一方でユーロ圏の景気の先行きは不透明で今後の判断の難しさも浮き彫りとなっています。
ECB政策理事会議事要旨:ロシアの軍事侵攻を受け、今後の方針で意見が分かれる
欧州中央銀行(ECB)は2022年4月7日に、政策理事会(3月9~10日開催分)の議事要旨を公表しました。多くのメンバーが「現在の高水準のインフレとその持続性から、金融政策の正常化に向けたさらなる措置を早急に講じる必要がある」と主張していたことが明らかとなりました。
ロシアのウクライナ侵攻による経済への衝撃にどう対応するかについて意見が分かれています。一部メンバーはインフレ見通しの悪化を理由に資産購入プログラム(APP)の純購入終了期日を設定し、7-9月期に利上げ開始の余地を残すことを主張しています。一方、他のメンバーはこれまでにない高い不確実性があるとして「様子見」のアプローチを支持しています。
どこに注目すべきか:ECB議事要旨、PMI、Ifo、ロシア、インフレ率
まず、ユーロ圏の市場動向として代表的な市場であるドイツ(独)国債利回りを見ると、政策金利の動向を反映する傾向がある2年国債利回りは上昇傾向となっています(図表1参照)。ロシアがウクライナに軍事侵攻した時期の国債利回りは大幅に低下(価格は上昇)しています。不確実性の高まりから市場における利上げ期待はこの時期後退したと見られます。しかし、足元ではエネルギー価格の上昇を背景にインフレ懸念が強まり、ユーロ圏の国債利回りは再び上昇基調です。ECBの議事要旨で浮き彫りとなった景気不安か、それともインフレ懸念かという対立軸は市場でも明らかです。
次にユーロ圏景気に対して比較的先行性が見られるユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)で見るとやや重い展開です。ただ景気拡大、縮小の分かれ目である50は上回っています(図表2参照)。しかしながら、独経済の半年程度先の動向を示唆するとされる独Ifo企業景況感指数の期待指数は急低下しています。独は天然ガス需要の6割程度をロシア産に依存するなど歴史的にロシアとの関係が深いと見られます。独経済の動向がどの程度ユーロ圏に波及するのかなど今後の展開に注意は必要です。
しかしながら、議事要旨全体のトーンではインフレへの対応を求める声が強まっている印象です。ユーロ圏のインフレ率(HICP)を見ると、前年同月比で7.5%となっています(図表3参照)。原油や天然ガスなどエネルギー価格の上昇がインフレ率の主要な押し上げ要因と議事要旨も指摘しています。エネルギーや食品を除いたコアインフレ率も3.0%の上昇と物価高が幅広い項目に及んでいます。また議事要旨ではエネルギー価格の上昇は(暖房など)人々の生活に直結する点も指摘しています。ただ、中期的なインフレ予想を見ると24年には2%前後(上もあれば下もある)とバラツキが見られます。足元のインフレ率急上昇に対する明確な懸念とは異なり、先行きにはやや迷いもあるようです。年内利上げの可能性は確かに高まりましたが、まだ幅を持ってみる必要もありそうです。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。