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- 中国金融統計に見る緩和拡大と、伸び悩み
中国の4月に公表される経済指標が明らかになるにつれ、当局の財政拡大や融資に前向きな姿勢が表向きの数字上は示されています。中国当局としても景気てこ入れの必要性を認識していると思われます。ただ、社会融資規模のデータを細かく見ると、短期的な資金供給に偏りが見られます。22年の成長目標(5.5%前後)の確保は簡単ではないと思われます。
中国社会融資規模:中国地方政府の債券発行前倒しなどを受け社会融資規模拡大
中国人民銀行(中央銀行)が11日発表した3月の経済全体のファイナンス規模(社会融資規模)は4兆6500億元(約91兆6100億円)と、市場予想の3兆5500億元や、前月の1兆1900億元を上回りました。前年同月は3兆4000億元でした(図表1参照)。
社会融資規模の残高は3月が前年同月比で10.6%の伸びとなり、先月の10.2%を上回りました。春節(旧正月)後の経済活動再開と企業や地方政府による債券発行増加が社会融資規模拡大の背景と見られます。なお、3月のマネーサプライ(通貨供給量)統計では、M2が前年同月比9.7%増と、市場予想の9.2%増を上回りました。
どこに注目すべきか:社会融資規模、GDP、成長目標、住宅投資
まず、中国社会全体への資金供給量を幅広く示す社会融資規模は純増額が3月は約4兆6500億元と、前月から大幅に拡大しました。銀行の融資額を見ると、3月の新規融資は3兆1000億元と、2月の1兆2000億元を大幅に上回っています。中国の景気動向を占う上では、金利に合わせて、もしくは金利以上に資金供給動向が注目されることがあります。社会融資残高の変化率などを見る限り、中国当局の景気てこ入れ姿勢がうかがえます。
4月18日には1-3月期GDP(国内総生産)が発表される予定です。22年の成長率について市場予想を見ると前年比で4%台が見込まれています。しかし新型コロナウイルス対策として導入されたゼロコロナ政策は経済活動を制限する成長の下押し要因と見られます。ゼロコロナ政策は足元では上海でも実施されており、4-6月期の成長にも影響するかもしれません。
中国の22年の成長目標は5.5%前後と設定されています。低いスタートから、高いゴールを目指さなくてはならない状況に直面していることから、財政拡大の必要に迫られています。3月の社会融資規模が増加した背景を見ると、政府債発行が約7000億元と前年から倍増しています。主に地方政府の特別債も前倒しで発行されている様子です。この結果、調達された資金はインフラ投資を押し上げていると見られます(図表2参照)。過剰投資の根源として削減対象となったことから元気がなかった公共投資に資金が流入しているようです。
ただ、もう一度社会融資規模などのデータに戻ると、大半を占める銀行融資は企業向けなどの短期融資が多くなっています。反対に企業の長期資金への需要は横ばいで、戻りは鈍くなっています。
再び固定資産投資のうち不動産投資を見ると、回復は鈍くなっています。長期融資の主役である住宅投資は回復が遅れている可能性があります。住宅販売は悪化傾向が続いています。不動産規制の影響が根強く残っていることが住宅投資が軟調な背景と見られます。もっとも、地方政府レベルでは不動産規制に緩和の兆しも見られます。報道によると60程度の地方都市で住宅購入時の頭金の引き下げや、住宅購入時の制限の緩和などが行われています。住宅ローン金利も小幅ながら引き下げられるケースもあるようです。しかしながら、住宅市場の緩和策は地方にとどまっており、市場や中国経済全体に与える影響は今のところ限定的と見ています。先のインフラ投資のみで中国経済全体を引き上げるのは容易ではないと見られます。ゼロコロナ対策の見直しなど新たな政策が必要と思われます。
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