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- IMF世界経済見通し、今後の苦境が浮き彫りに
ロシアのウクライナに対する軍事侵攻で世界景気は悪化し、インフレ懸念も悪化する、という認識はほぼ共有されていると思います。今回のIMFの世界経済見通しはこの認識通りの修正ではありますが、数字で具体化することにより、地域的な影響の違いなどが明確となる点で意義があると思われます。全体を眺めて思うのは経済的な勝者が見出せないことです。
IMF世界経済見通し:ロシアの軍事侵攻などを背景に世界の成長率見通しを下方修正
国際通貨基金(IMF)は2022年4月19日に世界経済見通し(WEO)を発表しました。ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け短期的に大幅な下方修正となり、22年の世界の成長率予測を1月時点の4.4%から引き下げ3.6%としました(図表1参照)。
一方、22年のインフレ率については先進国が5.7%、新興国/途上国では8.7%と予測しており、1月時点の予測から先進国は1.8%、新興国/途上国では2.8%と大幅に上方修正しました。なお、足元のインフレ率は先進国は6.6%、新興国/途上国は10.8%となっています(図表2参照)。当面、インフレ率は高水準で推移することが見込まれる一方で、23年のインフレ率予測は先進国が2.5%、新興国/途上国では6.5%をIMFは見込んでいます。
どこに注目すべきか:IMF、世界経済見通し、軍事侵攻、下方修正
まず、22年の成長率の下押し要因を地域別特性も含めて振り返ります。
最大の下押し要因はロシアの軍事侵攻です。直接的な影響としてロシア、ウクライナの成長率は各々マイナス8.5%とマイナス35%になるとIMFは予測しています。ロシアの軍事侵攻の影響は両国にとどまらず、商品相場の高騰で食料や燃料の価格が押し上げられたことから、新興国、特に途上国の景気悪化を見込んでいます。
21年と22年の新興国の地域別成長率見通しを比較すると、もっとも悪影響を受けるのは東欧とみられます。東欧の21年の成長率は6.7%ですが、22年にはマイナス2.9%にまで悪化すると見込まれ大幅に下方修正されています。一方、アジア、中東アフリカなども減速が見込まれていますが、縮小幅は概ね1~2%程度です。なお、中南米は21年に比べ22年の成長見通しは4.3%引き下げられていますが、各国固有の事情も反映していると見られます。
なお、21年の成長率が低水準で、そのうえ資源国でもあるブラジルは今回上方修正されました。また産油国のサウジアラビアも上方修正されています。この例が示すように一部上方修正も見られますが、あくまで例外と見られます。ロシアなど当事国に加え、大半の国が悪影響を受けており、経済的な合理性は見出し難い軍事侵攻と思われます。
ロシアの軍事侵攻以外の景気下押し要因としてIMFは世界の主な国で金融が引き締められていること、財政政策の余地が減少していることを指摘しています。新型コロナウイルス対策としてこれまでの支出を増やしてきたことが、今後の財政政策の圧縮要因となる可能性を指摘しています。
なお、新興国経済に影響がある中国でゼロコロナ政策により経済活動が制限されていることにも懸念を示しています。
最後に、世界共通の悩みとなっているインフレ率の上昇です。この問題は特に、新興国/途上国での影響が懸念されます。新興国/途上国では価格上昇が著しい食料品やエネルギーなどの品目が家計に占める割合が一般に高く、生活への影響が特に懸念されます。先進国同様、またはそれ以上にインフレ対策が新興国/途上国には求められることも想定されますが、どこも余裕に乏しいことから今後の展開には注意が必要と見ています。
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