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- 日銀、指値オペ長期化でとりあえずサプライズ演出
日本銀行は4月27~28日の金融政策決定会合で、概ね金融緩和政策を維持しました。ただ、指値オペについては応札が見込まれない限り実施するとし、10年国債利回りの上限を明確に設定するサプライズを行いました。市場は円安で反応しました。政治からは急激な円安進行は好ましく無いとの声も聞かれますが円安の先行きは不透明と見られます。
日銀金融政策決定会合:金融緩和政策を維持すると共に、指値オペを事実上常態化
日本銀行は2022年4月27~28日に開催した金融政策決定会合で、市場予想通り大規模緩和を維持する方針を決定しました。日銀は長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0.1%に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は維持するとしています(図表1参照)。
一方、日銀が無制限で日本国債を購入する指値オペ(公開市場操作)については市場の想定外に「10年物国債金利について 0.25%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施することとした。」と、日銀の政策方針を示した「当面の金融政策運営について」の中に明記しました。
どこに注目すべきか:指値オペ、応札、展望レポート、上限、円安
今回の日銀の金融政策決定会合でのサプライズは指値オペの長期化です。日銀が無制限に国債を購入することで(対象とする)10年国債利回りを、上限(約0.25%)を下回る水準に維持する指値オペは、当初は1日でしたが、21年3月に連続指値オペを制度として導入しました。ただ、指値オペを実施したのは今年3月末でした。今回は、明らかに応札が見込まれないなら実施しないが、そうでなければいつでも指値オペを実施するとして、事実上指値オペを常態化させることとしました。
指値オペの常態化は、別の見方をすれば日本の10年国債利回りは上限が設定(0.25%)されたことを意味します。日銀の金利上昇抑制姿勢の強さを再確認したことから、市場は当面、この上限を試すことは控え、上限ありきという中での取引となることも考えられます。
次に、日銀のインフレ見通しを今回の経済・物価情勢の展望で確認すると、22年度の物価上昇率見通しを1.9%と前回の1.1%から引き上げました。一方で23年度は1.1%と前回から据置きました、また、今回初めて発表した24年度予測は1.1%を見込んでいます。日銀は従来から、現在の物価上昇はコスト要因による一時的なものという説明をしてきましたが、展望レポートの予測はこの説明を支持する内容でした。
なお、連休の谷間の5月6日には先行して東京都の4月の消費者物価指数(CPI)、20日には全国のCPIが発表されます。携帯電話値下げの影響の低下やエネルギー価格上昇を反映して2%前後の水準が見込まれています。
なお、今回の会合では金融政策の将来の指針を示すフォワードガイダンスの変更は限定的でした(図表2参照)。筆者も含め、日銀が今回の会合で国債利回りの変動幅を変更することはなく、あるとすればフォワードガイダンスの変更に期待がありましたが、ほぼ変更が無く、むしろ現状維持に近い一方、指値オペの常態化が予想外に強化されました。
日銀が金融政策を変更しない、もしくは出来ない背景として財政政策を影ながら間接的に下支えしている必要性や、日本の物価の下方硬直性など日銀だけでは解決が難しいことから、日銀だけの問題ではないように思われます。
したがって、当面現状維持が見込まれる一方で、いくつかの疑問も残ります。例えばそもそも何故0.25%が上限なのかです。これまでも日銀は変動幅を調整してはいますが、コロナ禍の20年前半などは長期金利はもっと低い水準でも良かったのかもしれません。一方、現局面のように市場に金利上昇圧力が残る中、逆に指値オペを強化しています。これで出口戦略が一層わかりにくくなったような気がします。
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