- Article Title
- 日銀、円安への懸念を示すも、現状維持
日銀は先週の金融政策決定会合で金融緩和政策の維持を決定しました。米国をはじめ利上げを開始する国が増えていますが、利上げ開始にあたって当局は事前に市場と対話する期間も必要です。日本の場合、欧米に比べればインフレ率が低い(懸念はあるが)こともあり、準備さえ始めていない状況ですが、いつまでも現状維持というのはリスクが高いように思われます。
日銀金融政策決定会合:円安に懸念は示すも、大規模金融緩和政策を維持
日本銀行は2022年6月16~17日に金融政策決定会合を開催し、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の維持を賛成多数で決定しました。声明文では、リスク要因の項目で、金融・為替市場の動向が経済・物価に与える影響を「十分注視する必要がある」と表記しました。声明文で為替市場に言及するのは最近では異例です。
日銀の黒田総裁は17日の記者会見で急激な円安は経済にマイナスと述べたものの、長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0.1%に誘導するイールドカーブ・コントロール(長期金利上限は0.25%、YCC、図表1参照)の許容変動幅拡大は考えていないことも表明しました。
どこに注目すべきか:円安、YCC、順イールド、国債保有残高
日銀が大規模な金融緩和政策の継続を決定しましたが、黒田総裁の最近までのコメントなどから今回の会合における現状維持は市場予想通りで、特段驚きはありません。自ら種をまいてしまったのかもしれませんが、円安進行など市場から圧力を受ける中での政策変更は、かえって変動を拡大する懸念もあり、現時点での政策変更は考えにくいと思われます。もっとも、将来の政策変更の布石である政策の点検についても、現時点ではという但し書き付きながら否定しており、現状維持の姿勢を堅持しています。
ただし、市場にはほころびも見られます。日米の金利差、もしくは金融政策の違いを反映した円安進行は連日、マスコミでも取り上げられています。また、日本の国債市場でもやや珍しい現象が見られます。YCCでコントロールされている10年国債利回りに比べ、8年や9年など償還までの年限が短い国債利回りが高いということが、最近よく観察されています(図表2参照)。通常、国債利回りは年限に応じて利回りが高くなる(順イールド)のが普通です。10年近辺での利回り逆転はYCCの影響と考えるのが自然と思われます。
このことは円安に比べると地味な問題ですが、国債先物の現物受渡しへの影響などからか、日銀は10年より短めの国債(29年9月償還国債)についても連続指値を今月に発表しています。パッチワーク的な対応のようにも見えますが、看過できないという意識があるのかもしれません。
YCC維持により、日銀の国債保有が拡大し金融緩和効果がもたらされています(図表3参照)。国債保有の縮小を開始した米連邦準備制度理事会(FRB)と異なり、日銀の国債保有は当面増加が見込まれます。日銀の金融緩和政策を擁護する理由として利上げするタイミングではないからという声が聞かれます。その点は日本の景気を考えればもっともです。既に利上げプロセスを開始した先進国は、国債購入停止、利上げという段階を踏んで利上げを開始しています。一方日本の場合、その前段階で止まっており、利上げ云々の前に、その準備が整っていないように思われます。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。