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- 中国の年後半を占う
中国のゼロコロナ政策による景気悪化は4月に底を打ったと見られます。ただ、回復に早くも息切れの兆しが見られるなど、力強さに欠ける印象です。中国の年後半の経済方針を占うと、がむしゃらに成長率を引き上げるよりも、適正な成長率の水準を目指すうえで、政治を重視した方針が維持されるものと思われます。
中国PMI:7月は製造業、非製造業共に下落、4月からの回復に息切れの兆しか?
中国国家統計局が2022年7月31日に発表した7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0と、6月の50.2を下回りました。経済活動の拡大・縮小の分かれ目となる50を下回っています(図表1参照)。建設業とサービス業を対象とする非製造PMIは7月が53.8と前月の54.7を下回りました。
中国メディアの財新が8月1日に発表した7月の財新製造業PMIは50.4と、前月の51.7を下回りました。
どこに注目すべきか:中国PMI、ゼロコロナ政策、中央政治局会議
中国経済はゼロコロナ政策の緩和期待に伴い、4月を底に回復の兆しを見せていましたが、7月に息切れとなりました。経済指標の単月の変動そのものに一喜一憂する必要は無いと思われます。しかし、その変動要因の中には、中国の年後半の動向を占う上で参考になるものも含まれているようです。
まず、7月のPMIを押し下げた主な要因を振り返ります。政府系製造業PMIの構成項目を見ると、先行きを示す傾向がある新規受注は48.5と、50を下回ると共に、前月の50.4から低下しています。輸出向け新規受注も47.4と、前月の49.5を下回りました。
中国の7月の貿易統計は来週公表予定ですが、市場予想を見る限り、大幅な上昇は見込まれておらず、前年比で先月を小幅下回る水準が予想されています(図表2参照)。中国の輸出はコロナ禍では中国経済をけん引しましたが、今後その勢いは落ちる可能性があると見ています。世界的に景気減速感が高まる中、貿易に依存した景気回復への期待はやや低下すると見ています。もっとも、世界貿易の先行指標として注目している韓国や台湾の輸出は足元上下に大きく変動しており、今後の方向感を確認するにはもう少し今後の展開を見る必要があると考えています。
なお、明るい兆しとしてコスト低下が挙げられます。例えば、投入価格PMIは前月の52.0から7月は40.4、卸売価格PMIは46.3から40.1へ低下しました。特に投入価格は3月には66.1と高水準であったことから、投入コストの上昇が中国経済の負担であったと見られますが、今後の改善が期待されます。
非製造業PMIの内容を見ると、構成項目のうちのサービス業は6月の54.3から52.8に低下する一方で、建設業PMIは6月の56.6から7月は59.2と上昇しています。インフラ投資を軸に中国当局の景気支援策が上昇をけん引したと見られますが、サービス業の悪化も気になるところです。
中国の年後半の経済動向を展望するうえで、7月末に開催された中央政治局会議の内容が重要と思われます。前回4月の会議では、今年の成長率の目標である5.5%達成に強い意欲が示されました。3月に目標を公表したばかりであったので当然ではあります。しかし、今回の会議では成長率目標への達成に強いメッセージは控えられた印象です。むしろ目立ったのは住宅セクターの安定化などでした。例えば、日本でも報道された未完成住宅への住宅ローン返済を巡る騒動の火消しなどが念頭にあると思われます。
中国経済の動向を左右してきた要因の1つが新型コロナウイルスの感染抑制を徹底するゼロコロナ政策であったことは明らかです。中央政治局会議からは、ゼロコロナ政策の見直しは明らかでなく、当面は堅持するものと思われます。その場合、中国経済の動向はコロナ次第の展開となることも想定され、先行きは不透明です。成長率目標の達成も同様に不透明感が高いと思われます。
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