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- OPECプラス、やはり小幅増産にとどまる
バイデン米大統領の7月の中東歴訪の成果を占うOPECプラス閣僚級会合でしたが、原油増産の規模はお付き合いに留まりました。産油国側の事情を考えれば増産への期待は低かったように思われます。それでも、足元原油価格が下落傾向なのは景気動向など経済ファンダメンタルズがより原油価格の動向を左右していると見られそうです。
OPECプラス閣僚級会合:9月の供給は日量わずか10万バレルの増産で合意
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は2022年8月3日の閣僚級会合で9月の供給を日量10万バレル増産することで合意しました。バイデン米大統領が7月にサウジアラビアを訪問、増産を求めていました。消費国に一定の配慮を示したものの、増産は小幅にとどまりました。
なお、3日のニューヨーク商業取引所のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は、前日比3.76ドル安の1バレル=90.66ドルで終了しました(図表1参照)。原油先物価格は、ロシアがウクライナに侵攻する前の2月初旬以来の水準に下落しました。
どこに注目すべきか:OPECプラス、原油増産、ガソリン、原油需給
今回のOPECプラス閣僚級会合が注目されたのは、7月にバイデン米大統領がサウジアラビアなど中東諸国を訪問し、また湾岸協力理事会に参加し、各国に原油増産を要請したことを受けてのOPECプラスであるからです。
しかしながら、原油増産への期待は低く、結局成果はその通りになったに過ぎないとも言えそうです。OPECプラスは7、8月分について日量で60万バレル超の供給拡大を目処としていたことから見ても、外交の成果は物足りない印象です。
成果が期待できない背景を供給側の立場から見ると、ロシアへの配慮が挙げられます。OPECプラスはOPECにロシアなどの非OPEC国で構成されています。報道で関係者のコメントなどを見ると、今回の合意にはロシアへの配慮がうかがえます。
次に、産油国の増産余地が少なくなっている点です。石油生産量の動きを見ると(図表2参照、動向を示すため指数化で表示)増産傾向とはなっています。しかし、増産をけん引しているのはサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)などに限られます。反対に、ナイジェリア、アンゴラ、リビアなどは長期的に生産が低下傾向です。国別に事情は様々ですが、新規油田に対する投資の縮小という長期テーマが生産を抑制していると見られます。
反対に、原油価格下落の要因を需要サイドから振り返ります。なお、3日の原油先物価格が下落した背景はOPECプラスの合意内容でなく、米エネルギー情報局(EIA)の在庫統計でガソリンの在庫が市場予想のマイナスに反して増加していたことなどが挙げられます。
昨日だけでなく、図表1にあるように原油は6月から低下傾向です。その背景として需要の低下が考えられます。国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、原油は4-6月期には供給が需要を上回る供給超過であった模様です。中国のゼロコロナ政策などによる需要の減少が主な背景と見られます。もっとも、中国のゼロコロナ政策だけが供給超過の背景と限定してしまうと、すぐにも供給超過は解消されそうですが、IEAの予測ではしばらく、供給超過が続くと見込んでいます。恐らくその背景として世界的な景気減速懸念と、インフレによる原油需要の縮小が想定されます。例えば、米国のガソリン需要をEIAの週次データ(4週移動平均)で足元と過去の平均を比べて見ると、過去においては通常7月以降、夏場のガソリン需要は増加しますが、今年に限ってみると、需要は低下しています。足元ガソリン価格はようやく低下傾向ですが、過去水準に比べガソリン価格が高水準であることなどが需要を抑えている可能性があります。原油価格は産油国の価格政策など政治を反映する面も多々ありますが、景気動向も重要なファクターと思われます。
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