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- ECB、インフレ対応最優先を明確に
欧州中央銀行(ECB)は9月の政策理事会で0.75%と大幅な利上げを全会一致で決定しました。ユーロ圏の景気は年末から来年前半にかけ悪化が見込まれますが、ECBは場合によっては来年も利上げを継続する構えで、タカ派姿勢を示しました。今後のデータ次第ながら、ECBはインフレ対応を最優先する姿勢を明確にしました。
ECB:景気見通しが悪化する中での大幅利上げで、インフレ抑制姿勢を鮮明に
欧州中央銀行(ECB)は2022年9月8日の政策理事会で主な政策金利を0.75%引き上げると決定しました。主要政策金利をプラス0.5%からプラス1.25%、銀行が中央銀行に預ける際の金利(中銀預金金利)を0%からプラス0.75%に引き上げました(図表1参照)。市場では大半が通常(0.25%)の3倍となる今回の大幅利上げを予想していました。
ECBは四半期毎に公表しているユーロ圏の経済・物価見通しで、来年のGDP(国内総生産)見通しを前回(6月)の予想である2.1%から0.9%の成長に引き下げました(図表2参照)。一方で深刻となっているユーロ圏のインフレ率について来年は5.5%と前回から2%引き上げました。
どこに注目すべきか:ECB政策理事会、期待インフレ率、中立金利
今回のECB政策理事会後の市場の反応を簡単に振り返ったうえで、ECBの金融政策などのポイントを述べます。
まず、為替市場では一時的にユーロ安となったものの、その後ユーロ高に転じました。一方国債市場では多少の変動はあるものの、国債市場では利回りが上昇しました。
為替市場では、一時的にユーロ安が見られたのは、ECBのラガルド総裁が会見でユーロ安を注視はするも直接対応に否定的であったことなどが背景と見られます。しかし、ECBの利上げ姿勢などを考慮して、ユーロは結局上昇に転じました。
ユーロ圏国債市場ではドイツ国債などの利回りが上昇しました。直前の市場予想で一部0.5%の引き上げ予想もあった中、0.75%の利上げが決定されたこと、ECBの今後の利上げ姿勢がタカ派的(金融引き締めを選好)なことが背景と見られます。次に、ECBの発表内容における注目点として経済予想が挙げられます。23年の経済成長率見通しを前回から引き下げた一方で、インフレ見通しを引き上げています。景気悪化とインフレ率上昇懸念に直面する中で、ECBはインフレ対応を最優先する姿勢を示しました。ユーロ圏は米国ほど景気見通しが良好でないことから利上げに慎重では、という市場の一部に見られた観測を否定した格好です。ECBがインフレ懸念を強めた背景に、期待インフレ率の上昇があるとみています。最近のECBの調査でも長期の期待インフレ率に上昇がみられ、これを放置した場合、インフレが持続的となることも懸念されるため、引き締め姿勢の継続が想定されます。
ではどの程度、利上げを継続するかについてや、現在の利上げ局面の終着点に関しては不確かです。ECBはインフレ抑制の目安となる中立金利(景気をふかしも冷やしもしない金利水準)を今回も示しておらず、今後も市場の模索が続くとみられます。一方で、利上げ回数について、ラガルド総裁は利上げが想定される今後「数回」とは何回を指すのかと問われ、「恐らく2回から4回」と答えています。若干わかりにくい表現で注意が必要ですが、来年も利上げを続ける可能性が示唆されています。筆者は理事会開始前、年内残り2回、合計0.75%の利上げで様子見に転じる可能性もあると思っていました。しかし、ECBは順調に行けばもう少し高い政策金利の終着点を見込んでいる模様です。
なお、ECBは今回の経済見通しでロシアが天然ガス供給を停止した場合を悲観シナリオとして経済成長率が来年マイナス0.9%に落ち込むと予想しています。今回の声明文のポイントは2つで、①インフレ対応を最優先すること、②今後の政策は経済データ次第で利上げ幅は会合ごとに決定する、でした。リスクシナリオと②を踏まえれば、今後の展開により、経済動向は大幅に変動することも想定されることから、今後の政策運営を柔軟に見守る姿勢が求められそうです。
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