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- ドイツの生産者物価は市場予想を大幅に下回る
エネルギー価格上昇主導で、ユーロ圏のインフレ率は上昇傾向です。もっともエネルギー価格に落ち着きが見られ、インフレ率がある程度低下することも想定されます。しかし、ECBは賃金上昇率がインフレ率に追い付いていないなどインフレの二次的な波及要因により注目していると見られ、景気を抑制する水準まで金利を引き上げることもECBの選択肢なのかもしれません。
独生産者物価指数:市場予想を大幅に下回るも、依然高水準
ドイツ連邦統計庁が2022年11月21日に発表した10月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で34.5%上昇し、市場予想の42.1%、前月の45.8%を下回りました(図表1参照)。前月比ではマイナス4.2%でした。ドイツの10月の消費者物価指数(CPI、EU基準)は前年比で11.6%上昇しました。
なお、ユーロ圏全体の10月の消費者物価指数(改定値)は前年比で10.6%上昇しました。発表が遅いユーロ圏PPIは9月の前年比で41.9%上昇したものが直近の数字となります。
どこに注目すべきか:PPI、エネルギー価格、賃金、期待インフレ率
エネルギー価格の上昇などに伴い10%台にまで上昇しているユーロ圏のインフレ率に頭打ちの兆しが見られました。産業の川上の物価を示唆するPPIに頭打ちが見られたからです。もっとも、これまでのところ10月のPPIが下がったに過ぎず、インフレ率を押し下げるにはPPIの持続的な低下が求められます。
また、PPIの内容を見ると、前月比でマイナスとなった項目はエネルギー関連が大半となっています。天然ガスや原油など市場で取引されるエネルギー価格はすでにピークからは下落していたため、10月に起きることまでは予見できなかったとしても、PPIなどの低下は想定の範囲内と思われます。
では、ようやく見られたPPIが下向く兆しは、欧州中央銀行(ECB)の金融政策に影響を与えるでしょうか?おそらく、その可能性は低いと思われます。PPIはCPIに先行する傾向があるものの、政策目標はCPI(ユーロ圏ではHICP)の水準であり、そのCPIは下がっていないどころか、当面上昇する可能性さえあるからです。また中期的なインフレ要因も気がかりです。
この辺りの事情を最近(11月)のECBメンバーの発言で確認します(図表2参照)。例えば、レーン専務理事はユーロ圏の企業の価格転嫁が遅れており、CPIが今後も上昇する可能性を指摘し、当面利上げ継続が必要と述べています。PPIの低下だけでインフレへの懸念を緩めることはなさそうです。
他のECBメンバーもエネルギー価格の下落は想定の範囲内で、利上げペースを0.75%から落とすことは、ほぼコンセンサスとなっているようです。しかしながら、賃金上昇による中期的なインフレの抑制に目を光らせているようです。ユーロ圏の賃金をインフレ率で調整した実質賃金はマイナスが続いており、賃金上昇に伴うインフレをECBは警戒しているからです。ECBのラガルド総裁が景気を抑制する水準まで金利を上げる必要を指摘する背景の1つに賃金動向や期待インフレ率などを含めています。ECBは賃金動向を左右する要因に期待インフレ率を挙げています。ユーロ圏の期待インフレ率は全体的には抑制されていますが、利上げ開始後であっても緩やかに上昇しており(図表3参照)、ECBは金融引き締めの声を当面出し続ける必要がありそうです。レーン専務理事ら一部ECBメンバーはユーロ圏の景気後退懸念を指摘しています。そのような中にあって利上げペース減速は想定されますが、利上げ余地を残した政策運営を想定しています。
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