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FOMC、市場予想通り利上げ継続もハト派色
梅澤 利文
2023/03/23

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概要

金融不安の先行きが不透明な中開催されたFOMCは、インフレ懸念を反映して利上げ継続を決定したものの、ハト派色が浮き彫りとなる内容でした。今後の政策は物価安定と金融安定をバランスさせる方向がうかがえます。市場はすでに年内利下げを織り込んでいますが、今後の展開を占ううえでは、当局のメッセージには、これまで以上に耳を傾ける必要があると見ています。




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3月FOMC、利上げ継続とするも、声明文のトーンなどはハト派的

米連邦準備制度理事会(FRB)は2023年3月21日‐22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、主要政策金利を0.25%引き上げました。政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利は4.75%(下限)〜5.0%(上限)としました。利上げは9会合連続です(図表1参照)。

米地域銀行の経営破綻などで金融不安が高まる中、利上げ路線を維持した格好です。しかし、声明文のトーンや、パウエルFRB議長の記者会見でのコメントはどちらかといえばハト派(金融緩和を選好)的であったと見られます。そのため、FOMCを受け米国債市場では国債利回りが大幅に低下(価格は上昇)しました。

利上げを決定しながらも、随所にハト派的な要素

金融不安が残る中、利上げ継続を決定したものの、今回のFOMCは随所にハト派色が見られます。

まず、声明文では金融政策を説明する箇所で従来の「利上げ継続が適切」から「幾分の追加政策引き締めが適切」と緩和的な表現となっています。

また、リスクを説明する部分では、これまでのウクライナをリスクとする表現から、銀行問題への懸念が示されています。家計や企業の信用状況を厳格化させることが金融引き締めとなる可能性を注視すると見られます。

次に、FOMC参加者の各年末の政策金利見通し(ドットチャート)を見ると(図表2参照)、23年末の政策金利見通しは昨年12月に示された水準である5.1%で据え置かれました。パウエル議長は3月前半の議会証言で、この水準が引き上がる可能性を示唆していただけに、政策金利見通しの据え置きはハト派化と見られます。

そして、筆者が注目したのは、声明文や会見で、最近の金融不安の動向が家計や企業にとって金融環境を引き締め、経済活動や雇用、インフレ下押し圧力となる可能性を指摘した点です。インフレ抑制の金融政策と、金融安定の対策は別物というのは基本です。しかし現実にはスパッと分けられるというよりは、両者のバランスをとる必要があると思われます。

なお、パウエル議長は会見で金融(引き締め)環境について質問され、足元引き締めが進行している可能性を指摘しました。理由として典型的な金融環境指標に比べ、銀行の貸し出し態度が慎重になっている点を指摘しています。筆者もこの指標は重視すべきと考えています。

インフレ懸念も残る中、今後の当局のメッセージに注目が必要


パウエル議長は会見で、今回のFOMCで政策金利の据え置きが検討されたことを指摘する一方で、利上げが幅広いコンセンサスで支持されたと説明しています。また、年内の利下げは想定しないことや、必要ならば想定以上の利上げを実施すると述べるなど、利上げにも含みを残しています。

声明文もすべてがハト派に転じたわけではありません。例えば、雇用市場について、前回は「雇用市場は堅調」との表現から、今回は「雇用の伸びはここ数ヵ月上向き、堅調なペースで推移」と評価を引き上げています。

また、市場の一部でささやかれているQT(FRBが保有する国債などの保有額を減らす量的引き締め)の縮小や停止はなく、QTは従来の方針通りとなっています。QTの今後の方針は、しばらく様子見なのかもしれません。

余地は残すものの、金融環境の引き締めが十分なインフレ下押し圧力となれば利上げを見送る可能性も高まります。これがどの程度になるかは、金融不安の今後の展開に大きく左右されると見られます。しかし、現時点で金融不安の今後の動向を判断するのは時期尚早です。その中で当局のメッセージに注意を払う必要があると見ています。例えば、市場は年内利下げを織り込み始めていますが、パウエル議長は年内利下げに否定的です。ブラックアウト期間明けで期待される当局の発言は、今まで以上に注意が必要です。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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