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- ハマスとイスラエル:歴史的対立の背景
10月7日、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃して以来、連日戦闘状況が報道され、多数の被害者が報告されています。事態の1日も早い解決を待つのみですが、解決の糸口は見出されていません。両者には歴史的な対立と、和平プロセスの停滞という問題が横たわっています。国際社会は事態の解決に動き出していますが、今後の展開を占うことは困難な作業です。
パレスチナを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは2023年10月7日、イスラエルに対し多数のロケット弾を撃ち込むとともに、ハマスの戦闘員がイスラエルに侵入し市民を人質に連れ去り多大な被害を与えました。イスラエル側も反撃を加え、その後の展開は連日報道されている通りです。ただし、なぜハマスがイスラエルに残酷な行動をしたのかは観測にとどまっており、当然ながら、筆者にも本当の理由はわかりません。そこで、イスラエルとパレスチナの歴史的な背景を整理したうえで、最後に市場への影響を考えます。
なお、長期的な歴史のまとめるにあたり不正確な記述があることはご容赦ください。
イスラエルは2000年ほど前にパレスチナから追い出される
大半がユダヤ人となるイスラエルと、パレスチナ暫定自治政府を政府とするパレスチナ人には苦難の歴史が繰り返されています(図表1参照)。
ユダヤ人の苦難は2000年程前にさかのぼり、ローマ軍との2度の戦争に負けたユダヤ人は世界に離散(ディアスポラ)し、長い間祖国を持たない民族となりました。ユダヤ人が祖国に戻る動きはシオニズム運動に端緒がみえます。他国の支持もありましたが、英国の悪名高い三枚舌外交にあるように善意ではなくユダヤ人資本が本当の目当てという面があったようです。
ユダヤ人国家の必要性が国際的に認識される前に、ホロコーストという最悪の事態がユダヤ人の身に降りかかるという不幸がありました。1947年の国連総会でパレスチナをアラブ国家とユダヤ国家に分割する決議を採択。イスラエルは48年に独立を宣言しました。
もっとも、その直後から73年まで4回にわたるアラブ世界との戦争に直面しています。戦争は4度ともイスラエルが勝利しましたが、その後もアラブ諸国との緊張関係が続きました。
しかし、93年にはオスロ合意でイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)が互いを承認し、パレスチナが暫定的に自治を始めることで合意しました。もっとも、ハマスはオスロ合意を認めない姿勢でテロ攻撃を続け、イスラエルもパレスチナを敵対する政策をとり続け、和平プロセスは現在に至るまで停滞しています。
なお、イスラエルはパレスチナとの敵対関係を長期にわたり続ける一方で、イスラエルは79年にはエジプト、94年にはヨルダンと国交を樹立しています。また、2020年にはアラブ首長国連邦(UAE)などもイスラエルと国交を正常化しています。最近ではアラブの盟主とみられるサウジアラビアも米国の仲介でイスラエルとの関係改善を進めていましたが、今回のハマスとイスラエルの戦争で先行きは不透明となっています。
繰り返されるイスラエルとパレスチナの争い
1947年の国連によるパレスチナ分割決議はパレスチナ(地名)をユダヤ人とアラブ人の2国に分けるというのが本来の趣旨です。イスラエルが国家を建設したのに比べ取り残されたのがパレスチナ人です。パレスチナ暫定自治政府(以降パレスチナ)を政府とはしていますが、安定した国境を持つ近代国家とはなっていません。パレスチナは西岸地区(三重県と同程度)とガザ地区(23区の6割程度)の飛び地となっています。
ガザ地区を実効支配するのはハマスで、イスラエルにたびたびテロ攻撃を行っています。もっとも、今回のハマスの攻撃はこれまでとは次元の異なる規模となっています。
一方で、パレスチナの(ヨルダン川)西岸地区は、穏健派のアッバス議長が政治を行っています。PLOのアラファト議長がなくなった後、アッバス議長がパレスチナを引き継ぎましたが、その後路線の違いなどから、ハマスが支配するガザ地区と西岸地区に分れています。西岸地区にイスラエルとの問題がないかというと、まったく逆です。イスラエルによる入植問題が横たわっています。パレスチナ人が住む占領地に勝手に住み着く入植活動は国際法違反と思われますが、イスラエルはこれを繰り返しています。イスラエルとパレスチナの問題は幅広く、しかも根深いものとなっています。
ハマスとイスラエルの戦争状態が市場に与える影響をどのように考えるべきでしょうか?今後の展開を占うことはできませんが、影響度合いを3つのフェーズに分けるのが考えやすいと思います。
第1のフェーズはハマスとイスラエルの間の争いにとどまる場合です。イスラエルが攻撃の対象をハマスに限定するもので、パレスチナの民間人の被害を抑えるというものです。イスラエルにも入植活動などの負い目があることから、パレスチナに対する過剰反応は国際社会の理解を得られないとイスラエルが判断するケースです。この場合市場への影響は限定的と思われます。
第2のフェーズはアラブとイスラエルの代理戦争として紛争国の背後にいる関係国が戦闘を後押しするケースです。この場合市場の警戒感は強まることが想定されます。
第3のフェーズは関係国が直接戦火を交えるまで戦闘が悪化するケースで、この場合原油価格は暴騰、リスク資産の暴落が想定されます。
現状の米国やアラブ諸国の外交努力は、最悪でもフェーズ1にとどめることに注力しているように見られますが、緊張感をもって注視しています。
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