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- 米1月CPI、予想上回り利下げ開始見通しは後ずれ
米1月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、インフレは鈍化傾向ながら減速ペースは想定以上に緩やかとの観測が台頭したことで、米国債利回りは上昇し、米国の主要な株式市場は下落しました。市場では早ければ3月にも利下げ開始との思惑も見られていましたが、1月の雇用統計が堅調であったこともあり、利下げ開始の見通しは夏ごろに後ずれした模様です。
1月米CPIは市場予想を上回り、緩やかなペースでのインフレ鈍化を示唆
米労働省が24年2月13日に発表した1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.1%の上昇と、市場予想の2.9%上昇を上回りました(図表1参照)。前月の3.4%上昇からは鈍化したものの、市場予想ほどには低下せず、減速ペースが緩やかであることが示唆された格好です。短期的な動向を示す前月比の伸びも0.3%上昇と、市場予想の0.2%上昇を上回りました(図表2参照)。
エネルギーと食品を除くコア指数は前年同月比3.9%上昇し、伸びは23年12月と同じとなりましたが、市場予想の3.7%上昇を上回りました。前月比では0.4%上昇と、市場予想、前月(共に0.3%上昇)を上回りました。
サービス価格に占める構成割合が高い住居費鈍化のペースは緩やか
1月の米CPIの発表を受け、米国債利回りは上昇しました。政策金利の動向に反応する傾向がある2年国債利回りの上昇幅がより長期の国債より大きかったことなどから、利下げ開始時期見通しは後ずれしたと見られます。金利先物市場などに織り込まれる市場の利下げ開始予想を見ると、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ開始との予想はほぼ消滅し、夏頃の利下げ開始が市場予想の主流となっています。
この背景として、インフレ率低下のペースが想定より緩やかとの見方が増えているためと見られます。1月の米CPIの変化率の構成をエネルギー、食料品、財、及びサービスの各項目に分類し、各項目の寄与度などを参照しながら振り返ると、サービス項目がCPIの伸びの大半を占めています。サービス価格は1月に前月比で0.7%上昇し、前月の0.4%上昇を大幅に上回ったことでも影響の大きさが伺えます。
サービス価格は賃料など住宅関連項目で構成される住居費がサービス価格の6割弱を構成します。1月の住居費は前年同月比で6.0%上昇と、依然水準は高く、前月の6.2%上昇からの下げ幅も緩やかです(図表3参照)。住居費の大半を構成する賃料や帰属家賃(持ち家を家賃換算)は住宅市場の動向に遅行する傾向があります。速報性のある住宅価格指数として知られるジロー住宅価格指数が先行して鈍化したことから、住居費もこの先低下が想定されます。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長も過去の講演でジロー住宅価格指数の先行性に言及し、住居費低下の可能性を示唆していました。しかし、足元で米国の住宅市場に回復の兆しがみられる中、住居費が下がり続けるのか見守る必要がありそうです。
なお、住居費にはホテル宿泊代なども含まれ、1月は宿泊価格が前月比2.4%の急上昇を示しましたが、おそらく短期的な動きであろうと見ています。
米1月のCPIは、当面の物価動向を見守る必要性を示唆
次に、サービス価格の指数構成項目から住居費を除いた項目を見ると、幅広い項目で1月のサービス価格が上昇しています(図表4参照)。
自動車保険は前月比で1.4%上昇と23年12月からは鈍化したものの、引き続き高水準で、前年同月比では20%を超える上昇となりました。
医療や、輸送、教育・通信など多くの項目で、1月の伸びが23年12月を上回りました。構成割合が比較的大きい医療は1月が前月比で0.7%上昇と比較的高い伸びとなっています。これらの項目の価格の多くは賃金動向と連動する傾向があります。2月月初に発表された1月の米雇用統計で賃金(平均時給)が市場予想を大幅に上回ったことと整合的にも見えます。もっとも、賃金を価格へ反映させるには時間的な差異もあることから、しばらく様子を見る必要がありそうです。なお、1月の平均時給の上昇は天候不順による平均労働時間の減少の影響でかさ上げされた面もあると見られ、こちらも様子を見る必要がありそうです。
なお、1月の米CPIをサービス価格中心に振り返りましたが、中古車などを含む財価格は一部の製品価格が財価格全体の動きをゆがめている可能性を金融当局も指摘しています。寄与度が小さい財価格であっても注意点はありそうです。
1月の米CPIが市場予想を上回ったというだけで、インフレ再加速まで織り込むとしたら、それはそれで現段階では行き過ぎと思われ、むしろ当面は、様子見の時間が続くと見ています。筆者は従来通り、利下げ開始は6月か7月を想定しています。
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