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- 米大統領選・議会選挙とグローバル市場の反応
米大統領選と連邦議会選でトランプ氏が次期大統領に返り咲き、共和党が両院議席で過半数を占める見通しとなりました。この見通しを背景に6日の市場では、米国株式市場やドル指数が上昇し、米国債利回りも上昇しました。市場はトランプ氏の政策として関税引き上げと減税の組み合わせが景気を押し上げるとみているようです。しかしトランプ氏の政策にはインフレなど副作用も懸念されます。
米国大統領選挙はトランプ候補が勝利し、「トランプトレード」がみられた
米大統領選と連邦議会選は11月5日に同時実施され開票の結果、大統領選については共和党のトランプ前大統領が次期大統領へ返り咲く運びです。米連邦議会上院も共和党が過半数を確保し、下院選挙は途中経過ながら(日本時間7日午後1時時点)、AP通信によると共和党が206議席、民主党が191議席を獲得する見通しで、共和党が両院を握る可能性が高まっています。
この流れを受け、6日の市場ではトランプ前大統領が掲げる成長促進策を見込んだ「トランプトレード」から米国株式市場やドル指数が上昇しました(図表1参照)。米国金利も大幅に上昇(価格は下落)するなど様々な市場に影響が及びました。
トランプ次期大統領の政策への期待から米株式市場は上昇した
米大統領選挙を受け米国内市場では「トランプトレード」の動きがみられ、全般にリスクオンとなりました。しかし、海外を見ると一部に、リスクオフの動きがみられました。
米国株式市場で6日の騰落率上位セクターは鉄鋼、自動車製造、銀行部門などでした。鉄鋼は保護主義の導入と世界貿易ルールの再構築への期待と思われます。銀行株の上昇は金融規制の緩和が銀行業界に追い風になるとの見方が背景と思われます。
なお、6日の株式市場の反応には、投開票の結果がスムーズに判明したことで、市場が懸念して照いた選挙の結果を巡る混乱が回避できたことも押し上げ要因だった可能性があります。
米国外では株式市場は全般に軟調でした。6日の欧州株式市場は終値で下落しました(図表2参)。欧州株式市場は、取引時間中には上昇する局面もありましたが、自動車セクターなど多くのセクターが下落しました。ただし米国同様、欧州でも銀行セクターは比較的堅調でした。
中国株式は軟調な局面もありましたが、比較的落ち着いています。トランプ政策の関税政策は懸念されますが、中国当局はタイミングよく景気刺激策を発表していることが下支え要因と思われます。
通貨市場ではドルが上昇する一方で、ユーロ安や円安が当初進行しました。新興国通貨も一部売られました。しかし、足元ではユーロ安などのさらなる進行は見られず、比較的落ち着いた動きもようにみえます。大統領選でのトランプ氏、議会選での共和党優位は、すでにこの1月ほどの間にある程度織り込まれていたようにも見受けられます。
ドル上昇と裏腹に、金価格は下落しました。これまで急ピッチの上昇が進んでいただけに、調整が起こった可能性もあります。
方向感が定まりにくかったのが原油市場です。ドル高要因だけ取り上げれば原油にとっては下押し要因です。しかし、次期トランプ政権が中東情勢に安定をもたらすのか、それとも新たな緊張を生み出すのか、判断が分かれるところでしょう。6日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物取引は小幅な動きとなりました。
移民制限や関税政策の導入などはインフレ懸念をもたらす恐れも
トランプ氏の勝利と、共和党が議会で多数派を占めるとの思惑から関税引き上げなどが実施され、インフレ懸念が高まることを素直に反映したのは米国債市場と思われます。6日の米国債市場では10年国債利回りが4.4%台にまで上昇しました(図表3参照)。物価連動国債の価格から算出される予想インフレ率である期待インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率)は2年から30年まで、いずれの期間も上昇しました。
トランプ氏の政策は就任を待つ必要はありますが、公約などから移民政策の強化が示唆されています。国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しで示した試算でも移民政策の変更がインフレを押し上げることが示されています。また関税も最終的には消費者に転嫁されることからインフレ要因で、これらが、国債市場の利回りを押し上げたようです。
トランプ税制は、関税を強化して所得税減税などの原資に充てるというのが基本的なアイデアです。海外は関税、米国内は減税という点に焦点を当てれば、海外の株式市場が軟調な反応だった一方で米国株式市場は上昇したという反応は、まさにこの点が反映されたとみています。
しかし、関税に加え、移民を制限する政策はインフレ要因とみられます。今回の選挙で世論調査などを見ると、有権者はガソリン価格高騰などインフレに不満を示しています。すでにガソリン価格は落ち着いているという点は置くとしても、トランプ氏の政策はインフレ懸念を含むという矛盾がみられます。トランプトレードで見られた市場の米株高、ドル高などの上昇分は、政策との整合性に照らして、持続性を判断する必要がありそうです。
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