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- 植田総裁のインタビュー、内容は利上げの地均し?
日本銀行の植田総裁は11月30日付の日本経済新聞でのインタビューで、経済データが想定通りに推移しているという意味では利上げに近づいていると述べ、また円安リスクに言及しました。12月の金融政策決定会合を前に、利上げを決め打ちしたわけではないとしても、地均しを進めていることは確かなようです。ただし25年の賃金動向や米国の政策を見極めたいと利上げに慎重な姿勢も示しました。
日銀の植田総裁はインタビュー記事で追加利上げについて語る
日本銀行の植田総裁は11月30日付けの日本経済新聞とのインタビュー(28日実施)記事で追加利上げなどに関して発言しました。利上げのタイミングについては、「経済データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいているといえる」と指摘しました。18日の名古屋の講演では利上げの時期について明確に語らなかったことに比べ、インタビューの内容は利上げの確度が高まった印象です。しかし、25年の賃金動向や米国の政策を見極めたいとも述べ、利上げに慎重な一面ものぞかせました。
市場の30日の記事への見方は分かれていますが、足元は円高傾向です(図表1参照)。
植田総裁は時期は特定しないものの、利上げの地均しを行ったようだ
植田総裁の11月30日付インタビューの主な発言内容を振り返ると(図表2参照)、「データが想定通りに推移という意味では(利上げの時期は)近づいている」、という点と円安に対応しなければいけない場合もあると述べた点で、これまでよりも追加利上げに踏み込んだ印象です。
ただし、近づいたといっても、それが次の12月の金融政策決定会合なのか、25年1月の会合なのか、それともその先なのかは明確ではありません。なお、円安についてはこれまでより踏み込んだ発言となっていますが、どの水準の円安を懸念しているのかはわかりません。インフレ率が2%を超え始めているとき一段の円安はリスクが大きいと指摘したにすぎないとも見られます。それでも、日銀が円安に対して、インフレ環境によっては無視できないと述べたことには意味があると思われます。
「近づいている」と「円安」が利上げ支持要因であるのに対し、①当面、「(米国の政策で)どういうものが出てくるか確認したい」と、②「25年の春闘の賃上げの勢いを確認したい」、の2点は追加利上げの時期を遅らせる要因とみられます。
それでも、12月の日銀会合(18日~19日)を前にしたこの時期に植田総裁が単独インタビューで利上げに踏み込んだ内容を述べたのは12月の追加利上げの地均しと考えるのが自然でしょう。
市場もある程度、植田総裁の発言から、「次の利上げ」を受け入れているようです。12月3日には、先のインタビュー後に最初の10年国債入札がありましたが、入札を見ると一応無難に消化された印象です。10年国債利回りが1.1%を小幅に下回る水準でも一定の需要があるようです。
なお、植田総裁は今回のインタビューでも中立金利(景気を吹かしも、冷やしもしない名目金利)の範囲を従来の説明通り1%~2.5%としました。範囲の上限、下限にも幅を見る必要があるとの注意書きも従来通りです。仮に、下限の1%を現在の利上げ局面の政策金利の天井とすると、足元の10年国債利回りはやや低いように思われます。恐らく、市場は日銀の利上げを緩やかなペースで天井も低い(1%以下)と見ているものと推察されます。
日本のインフレ指標は目先の利上げを支持する内容だが
日銀の金融政策は日米金利差を背景とした為替動向や米国の経済政策、とりわけトランプ次期大統領の政策に左右されそうですが、ここからは日本の経済指標、特にインフレ指標を確認します。
植田総裁のインタビュー翌日の9日に発表された11月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)は変動の大きい生鮮食品を除いたコアCPIが前年同月比2.2%上昇と、前月を上回りました(図表3参照)。政府の電気・ガス代への補助金(酷暑乗り切り緊急支援)が半減したことがCPIを押し上げたと総務省は指摘しています。また、仮に補助金が全くなかった場合、コアCPIは2.5%上昇であったと試算しています。エネルギーを輸入に頼る中、円安の影響は「関係ない」とは言い難いようです。
生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは1.9%上昇と、前月の1.8%上昇を上回りました。生鮮食品以外の食料や外食などが押し上げ要因とみられます。しかし、賃金との関係で注目される一般サービスは1.2%上昇と、前月の1.1%上昇こそ上回りましたが、伸び悩みと見受けられます。今年の賃金は堅調な伸びを確保しましたが、これが今年だけで終わるようでは、物価の伸びは期待を下回る恐れもありそうです。植田総裁が25年の春闘における賃金の伸びを確認したいとくぎを刺したのは、もっともなことと思われます。
さらに、個人消費が明確な回復を見せていない点もやや気がかりです。9月の家計支出や10月の実質小売販売額に伸び悩みが見られました。気候要因が押し下げ要因だった可能性があるとしても、賃金と価格の好循環を下支えする消費行動というには物足りない印象です。
インフレ指標は12月(もしくは来年1月)の利上げを支持するとしても、その後の追加利上げには賃金の伸びが勢いを維持することが必須なようです。
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