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- 2月の米雇用統計、数字は健全だが不安材料も
2月の米雇用統計では、非農業部門の就業者数が15.1万人増加し、3ヵ月平均では約20万人増となり、失業率は4.1%と安定した水準で、数字は総じて米労働市場が健全であることを示唆している。しかし、「政府」部門の雇用がトランプ政権の政策で伸び悩んだことや、広義の失業率(U6失業率)が上昇するなど、今後の不安材料も散見された。杞憂で終わればよいが、今後の動向には注視が必要だろう。
2月の米雇用統計で非農業部門の就業者数は市場予想を下回った
米労働省が7日発表した2月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から15.1万人増と、市場予想の16.0万人を下回った(図表1参照)。24年12月の伸びは30.7万人から32.3万人に、25年1月は14.3万人から12.5万人にそれぞれ修正された。直近3カ月の平均は約20万人で、コロナ禍前の平均(約19万人)を上回った。
失業率は4.1%と、市場予想、前月(共に4.0%)を上回ったが、失業率の長期水準である4.2%を下回り、水準としては悪くない数字だった。
平均時給は前月比0.3%上昇と、市場予想に一致し、前月の0.5%上昇を下回った。前年同月比では4.0%の上昇と、市場予想、前月(共に4.1%上昇)を下回った。
部門別に就業者数の伸びを見ると、政府部門などに伸び悩みが見られた
2月の米雇用統計で就業者数の伸びは15.1万人、失業率は4.1%などの水準から判断して、米労働市場は底堅いようだ。ただし、一部に不安材料も見られた。米国の労働力人口の平均的な伸びを考慮すると、就業者数の伸びが15万人程度(3ヵ月平均では約20万人)というのは堅調な部類だろう。ただし、7日の米国債市場では、雇用統計が発表された後、利回りは小幅ながら低下した。市場は雇用統計の中に不安材料を見出したのだろう(もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が米国経済は良好と発言したことで利回りは結局上昇したが)。では何が不安材料か?
就業者数の伸びを部門別に見ると(図表2参照)、明暗が分かれた。最近までの雇用の伸びを支えてきた部門である「教育・医療」は2月も堅調だった。「製造業」と、(図表にはないが)「建設業」もプラスの伸びを確保した。金融や情報などサービス部門の一部も堅調だったのは明るい材料だ。
一方で、 「教育・医療」と並んで雇用の伸びをけん引してきた「娯楽・宿泊」、「政府」は2月に伸び悩んだ点は不安材料だ。「娯楽・宿泊」は山火事などの影響が残っている可能性がある。悪天候等による休業者数を確認すると1月は57.3万人と大幅に増加したが、2月も40万人程度で、回復が遅れている。通常、悪天候等による休業者数は20万人を下回ることが多く、回復の遅れが気になる。
「政府」部門の伸び悩みも不安材料だ。地方政府の雇用の変化は小幅だった一方で、連邦政府は2月に前月比で1万人減となった。トランプ米大統領の政策による連邦政府職員の採用凍結や早期退職の影響が雇用減少の背景だろう。なお、トランプ大統領は2月11日に大幅削減を目指す新たな大統領令に署名した。政府部門の採用には、今後も下押し圧力が残りそうで懸念される。
健全な雇用統計にみられた不安材料が今後悪化しないかには注意したい
次に失業率を見ると2月は4.1%と、市場予想、前月(共に4.0%)を上回ってはいるが、健全な水準と見られる(図表3参照)。ただし、2月の失業率の上昇は小幅ではあるが、労働参加率が62.4%と、前月の62.6%を下回った。低下の原因は特定できていないが、仮に労働市場への参入意欲の低下が背景なら、こちらも不安材料だろう。
別の不安材料は8.0%に上昇した広義の失業率(U6失業率)だ。経済的理由によるパートタイム就業者を失業者にカウントするなどして算出するU6失業率の上昇が続くようであれば注意が必要だろう。長期的にみると、通常の失業率(U3)とU6は連動する傾向があるからだ。パートタイムが短期的に増えただけという可能性もあるが、今後の不安材料として注意は必要だろう。
最後に、2月の平均時給は前月比0.3%上昇と、数字としては過熱が心配された前月の0.5%上昇を下回り落ち着いた(図表4参照)。これだけなら平均時給は改善したように見える。
ただし、2月の平均時給は見た目ほど強くないかもしれないことが不安材料だ。1月の平均時給が前月比で急上昇した背景は週平均労働時間が34.1時間と大幅に短縮したためと見られる。市場予想では2月に週平均労働時間が長期化して平均時給が鈍化すると見込まれていた。しかし結果を見ると、2月の週平均労働時間は1月と変わらない一方で、平均時給が押し下げられた。平均時給は見た目の数字ほどには強くないかもしれず、今後の動向に注意が必要だ。
米雇用統計は、基本的に健全と思われるが、不安材料が今後悪化しないかに注意を払いたい。
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