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- 実践的基礎知識 金融/経済史編( 9 )<バブル崩壊から金融再編①>
バブル崩壊から金融再編(1991年〜2003年)①
1990年のバブル崩壊によって1973年から続いてきた安定成長期が終わり、日本経済は「失われた20年」と呼ばれる低成長時代に突入しました。バブル崩壊で株価と地価の下落が止まらなくなり、積極的に財テクに走っていた企業に損失が発生しました。一方、金融機関では不良資産や簿外債務が大きく増加して、大手金融機関ですら破綻に追い込まれる状況となりました。
相次ぐ金融機関の破綻
バブル崩壊で株価は大きく下落し、財テクに走っていた企業に損失が発生し、企業破綻が増加していきました。また、地価下落によって、不動産を担保としていた銀行融資に担保割れが生じました。これらによって差し押さえられた不動産が売却され、更に不動産市場に価格下落圧力がかかり、更なる差し押さえを呼ぶという悪循環に入りました。
銀行が回収見込みで資産計上していた債権が全額回収できなくなった場合、その債権を不良債権と呼びます。バブル崩壊後でもなお、いずれ株価や地価も回復するだろうとの甘い期待から不良債権処理が遅れ、不良債権は雪だるま式に増えていきました。また、営業特金を獲得するために顧客に利回り保証をした結果、下落した株式を引き取らざるを得なくなった金融機関も存在しました。
本来ならば不良債権を時価評価して、引当金を積む必要がある場合でも、決算期をまたいで一時的に損失を子会社などに隠蔽するいわゆる「飛ばし」を行う金融機関もありました。
1997年から1998年にかけて、大手証券会社や銀行が相次いで破綻しました。北海道拓殖銀行は、地価の上昇を見込んで実際の土地評価額を上回る過大な融資を繰り返し、地価下落後の回収も思い通りにならなかった結果、1997年11月に経営破綻し北洋銀行および中央信託銀行(現三井住友信託銀行)に事業を譲渡しました。これが大手銀行である都市銀行の、戦後初の破綻銀行となりました。
相次ぐ金融機関の破綻(つづき)
山一證券は4大証券の一画を占めていましたが、法令違反の運用利回り保証や損失補填をしていました。また、これらを簿外債務として「飛ばし」で隠蔽し粉飾決算を行っていました。
1997年11月に簿外債務の存在をメインバンクである富士銀行(現みずほ銀行)に明らかにして支援を求めたものの、2,500億円を超える簿外債務の1割程度しか支援できないとの回答を受けました。また、不正利益供与と粉飾決算が悪質と判断され、日銀からの特別融資も認められませんでした。最終的に大蔵省(当時)に簿外債務の存在を報告した結果、事業の存続は認められず自主廃業という選択肢しか残されていませんでした。この時期には、準大手証券の三洋証券も1997年11月に破綻しました。
不良債権処理
大手銀行である長期信用銀行の破綻も相次ぎました。日本では都市銀行が短期の融資を行い、長期信用銀行は長期の融資を担当するという金融の長短分離政策が長く続いていました。日本が高度経済成長の時代には、この長短分離がうまく機能していましたが、安定成長からバブル景気の頃には長期の融資のニーズが減少し、また企業も例えばワラント債の発行といった直接金融に移行が進んだことから、長期信用銀行は資金の運用先に悩むようになりました。
バブル期に日本長期信用銀行(長銀)と日本債券信用銀行(日債銀)の2行は、不動産担保の融資にのめりこんだ結果、不良債権に悩まされることとなりました。長銀は、1998年3月の決算時に不良債権を少なく計上する粉飾決算を行い、その後外資系や日本の銀行との合併を模索しましたが実りませんでした。結局、10月に金融再生法と早期健全化法の制定を受けて破綻処理され、一時国有化を通じて最終的には新生銀行として再スタートを切りました。日債銀は、12月の金融庁検査で債務超過と認定され、国有化を通じてあおぞら銀行として再スタートを切りました。
金融機関以外の破綻で注目を集めたのがマイカルでした。マイカルは、大阪市を中心に総合スーパーを展開していましたが、ドイツ・マルク建て社債や転換社債を発行して、巨大な店舗の出店を繰り返した結果、バブル崩壊後は資金繰りに窮するようになり、2001年11月に会社更生法の申請に追い込まれました。
問題はマイカルが発行していた約3,500億円の社債がデフォルト(債務不履行)となったことです。このマイカルの社債を組み入れていたMMF(マネー・マネジメント・ファンド)の基準価額が元本の10,000円割れを起こしました。元本割れはありえない安全な金融資産というMMFの安全神話が崩れたとともに、このような商品を取り扱った証券会社や銀行の販売姿勢が大きな問題となりました。
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