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- 実践的基礎知識 金融/経済史編( 14 )<世界的金融危機①>
世界的金融危機(2004年~2011年)①
ITバブル崩壊や不正会計問題、同時多発テロといった出来事が続く中で、米国は大幅な金融緩和を行いました。6.5%だった政策金利は1.0%にまで低下し、この緩和環境で新たなバブルが発生しました。住宅バブルです。住宅バブルの中で「サブプライムローン」という低所得者向け住宅ローンの問題が大きな金融危機へと繋がって行きました。
バブルの再燃
アメリカでは2000年以降のITバブル崩壊や不正会計問題、同時多発テロといった出来事が続く中で大幅な金融緩和が行われました。このような環境下、2001年に大統領に就任したブッシュ(息子)氏は、個人消費と住宅投資を拡大する政策を採用しました。具体的には、ブッシュ減税と呼ばれる大幅減税、住宅ローン利子分の所得控除や融資上限の引き上げなどの優遇措置といった住宅投資促進策が導入されました。
こうした中、プライムと呼ばれる信用力の高い優良借入層よりも信用力の劣る個人に貸付ける「サブプライム」ローンが普及します。このサブプライムローンによって、従来であれば住宅ローン借入によって住宅を取得することの難しかった低所得者層が住宅を手に入れることができるようになりました。一方、信用力が劣る分だけ高い金利が設定されているサブプライムローンには、運用難にあえぐ様々な金融機関の資金がどんどん流れ込んでいき、大きな資金供給源が生まれていきました。さらに、証券化がすすんだことで住宅ローンの従来の出し手以外の資金も加わり、まとめた住宅ローンに優先劣後構造を設定して上位部分に最上位格付を付与して販売されるなどして更に大きな資金を集めるようになっていきました。こうしてリスクの所在や大きさがどんどん不明確になっていき、世界的に金融システム全体が深刻な脆弱性を抱えていきました。
サブプライムローンによって調達された資金は、低所得者層による住宅取得を促進し、低所得にも関わらず居住用住宅以外にも投資用住宅を何軒も所有するといった人も増えていき、旺盛な取得需要によって住宅価格はうなぎ登りに上がっていきました。購入した住宅の価格上昇が担保価値を上げて新たな借入余力を産み、更なる借入と新たな物件取得を促したり、住宅価格上昇による転売益の発生が更に多くの人の参入を招きました。
住宅バブルの崩壊
加熱する米国住宅市場および住宅ローン市場を抑えるため、米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げによる金融引き締めを開始し、住宅ローンの金利が上昇し始めます。金利上昇により利息を支払えなくなった人が、担保不動産を売却せざるを得なくなり不動産価格が下落、これが新たな担保価値割れと担保物件の売却を招き、負の連鎖が始まりました。住宅バブルの崩壊です。
資源バブルの発生
金融緩和の中で運用難にあえぐ資金はアメリカの住宅バブルを引き起こし、更に世界各地の市場に流れ込みました。ちょうどこの時期は、新興国と先進国の成長率の差に注目が集まり始めたころでした。特に、新興国の中でも経済規模の大きな国々の成長は世界経済の中で先進国と肩を並べるまでの大きな存在感となり、急速に進むインフラ整備や家電普及、住宅建設は大きな人口のボリュームも相まって巨大な資源需要を生み出しました。こうして、資源バブルが発生しました。様々な資源の価格が急騰し、銅線や鉄線の盗難事件が世界各地で相次ぎました。そして、資源価格の高騰は資源国の多い新興国市場への資本の流れを更に加速していきました。低金利、低成長、低リターンの先進国市場から大量のお金が新興国へ向かい、新興国投資ブームとも言える活況が訪れたのです。
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