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米国株式投資戦略 ~米国景気後退確率が上昇~
田中 純平
2019/06/18

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概要

NY連銀が算出する12ヵ月後の米国景気後退確率指数が29.6%に達しました。確率自体は低く見えますが、この確率が過去30%を超えた時点から12ヵ月後に景気後退入りしているケースが多く、米国経済の先行きについては警戒する必要があると考えます。



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米国の景気後退確率が上昇中

ニューヨーク(NY)連銀は12ヵ月後の米国景気後退確率を指数として毎月算出しています。このNY連銀米国景気後退確率指数(以下、景気後退確率)は、米国10年国債利回りと米国財務省証券3ヵ月物利回りとの長短金利差をもとに計算されています。図表1は、この景気後退確率と実際の米国景気後退期を比較したものです。ご覧の通り、足元の景気後退確率は、長短金利差の縮小/逆転を反映し29.6%まで大きく上昇しました。

この景気後退確率が30%を超えると、実際12ヵ月後に景気後退入りしているケースが多かったことが分かります。図表2は、景気後退確率が30%を超えて上昇した時点から、実際12ヵ月後に景気後退入りしていたかを判定した表です。図表のとおり、景気後退確率が30%を超えた過去8回のケースでは、その12ヵ月後に景気後退期に入っていたケースが4回ありました。残り4回のうち、3回は12ヵ月より1-4ヵ月遅れて景気後退期に入っていたので、精度としてはそれほど悪くない指標だと言えます。この景気後退確率が直近29.6%まで上昇したため、いよいよ警戒水域に入ったと考えられます。

 

 

今後の米中貿易戦争次第で景気後退入りが早まる可能性も

米国の長短金利差が足元で逆転した背景には、米中貿易戦争の激化があります。年初から4月にかけては、米中貿易協議が進展しているとの報道が相次いだことから、長短金利差は概ねプラスを維持していましたが、今年5月に米国が制裁関税第3弾を発動し、制裁関税第4弾の発動も示唆してからは、長短金利差が一気に逆転しました。今月28日-29日の20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)で米中合意がなされる可能性は低く、今後は米中貿易戦争がエスカレートするリスクも警戒する必要があります。仮に米中貿易戦争がエスカレートした場合、米国の景気後退期が想定よりも早く訪れる可能性もあるため、引き続き米国株式市場の先行きについては慎重なスタンスが求められると考えられます。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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