Article Title
GAFAMが売られる中で「買われた銘柄」の共通点
田中 純平
2020/09/18

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

コロナ禍で競合上優位とされてきたGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)銘柄が、9月に入ってから軟調に推移している。コール・オプションを投機的に活用してきた個人投資家や機関投資家による「ポジション調整(買われ過ぎの反動)」とも解釈できるが、その一方で株式市場の物色対象に変化が起こっていることも見逃せない。



Article Body Text

月初来で軟調に推移する世界株指数はGAFAM銘柄の下落による影響が大きい

MSCI世界株指数は月初来で軟調に推移している。これまでコロナ禍で競合上優位とされてきた超大型株のGAFAM銘柄の上昇が、9月に入ってから一転して下落基調となったことがその要因として挙げられる。GAFAM銘柄はコール・オプションなどを投機的に活用してきた個人投資家や機関投資家が物色していた銘柄だっただけに、今月に入って「ポジション調整(買われ過ぎの反動)」が起こった可能性がある。

しかし、MSCI世界株指数が月初来で下落しているとはいえ、その一方で上昇する銘柄も散見されるのが今回の調整局面の特徴だ。例えば、NYダウ指数における月初来の銘柄別騰落率をみると、Dow(化学)、Caterpillar(建設機械)、3M(コングロ)、McDonald’s(ファーストフード)、Nike(スポーツ用品)といった銘柄が上昇していることが分かる。これらの銘柄に共通して言えることは、シクリカル性(景気サイクルに対する感応度)が高い「景気敏感株」だということだ。

 

 

新型コロナワクチン承認を見越した動きか?

米国では新型コロナワクチン承認に向けて当局の動きが慌ただしくなっている。16日には米CDC(疾病対策センター)のレッドフィールド所長が11月から12月に新型コロナワクチンが供給される可能性について言及(トランプ大統領は10月から供給を開始できるとCDCの見解を否定)するなど、新型コロナワクチン供給の可能性が高まりつつある。

新型コロナワクチンが米FDA(食品医薬品局)によって緊急承認されれば、本格的な経済活動の再開が期待されることになるため、これまで注目されてこなかった景気敏感株を物色する動きが強まっても不思議ではない。

コロナ禍で競合上優位とされたGAFAM銘柄が売られる中で、景気敏感株が買われている状況を踏まえると、投資家はすでに新型コロナワクチンの早期承認を見越して、景気敏感株へ乗り換えはじめているとも解釈できる。だとすれば、GAFAM銘柄の下落は単純に「買われ過ぎの反動」だけではなくなるため、今後の運用戦略としては景気敏感株への分散投資も有効になる可能性がある。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞歴を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして、主に世界株式市場の投資戦略などを担当。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演。2023年より週刊エコノミスト「THE MARKET」に連載。日本経済新聞ではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


東京都知事選挙と岸田政権

フランス混乱の背景:極右政権で大丈夫なのか?

邦銀の今後の見通し:サイクルと構造変革

政策金利5%台でも軟着陸する米国経済

フランス総選挙 極右優勢で金融市場は警戒ムード

少子化対策としての資産所得