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- 足元の株高をどう解釈すべきか?
米大統領選の先行き不透明感の後退に加え、有効性の高い新型コロナワクチンの供給による経済正常化の期待感から、世界の株式市場は上昇基調となっている。しかし、相場上昇の背景にはこれ以外の要因も強く働いていると考えられ、世界株式市場は短期的な調整局面をこなしながらも、中長期でみれば堅調に推移する展開が想定される。
新型コロナワクチンが相場上昇のきっかけ
足元の世界株式市場は上昇モメンタム(株価の勢い)を強めている。相場をけん引しているのは、コロナ禍で出遅れていた景気敏感株だ。世界の株式市場では、コロナ禍で競争上優位とされたGAFAMを中心としたグロース株がこれまで相場上昇を主導してきた。しかし、バイデン大統領の当選が確実視され米大統領選の先行き不透明感が後退したことに加え、90%以上の高い有効性がある新型コロナワクチンが米国で承認間近となったことから、来年以降の経済正常化シナリオが一気に表面化し、景気敏感株が物色されたと考えられる。おそらく相場上昇のきっかけとしては後者の要因のほうが大きいだろう。
そもそもワクチンは開発から承認まで5年~10年(又はそれ以上)かかると言われている。また、新型コロナワクチンの有効性についてもWHO(世界保健機関)は今年4月時点では70%以上の有効性を目標としていたが、FDA(米食品医薬品局)による緊急使用許可が今年12月にも下りるとされているファイザーとモデルナの新型コロナワクチンは、いずれも90%以上の有効性を示した。経済正常化に対する期待値が、短期間で急速に高まるのも無理はない。
追加景気対策への期待感も相場を後押し
新型コロナワクチンはファイザーが摂氏マイナス70℃、モデルナが摂氏マイナス20℃で保管・流通しなければならないため、供給体制に課題があることは否めない。また、ワクチンの接種率が予想外に低くなり、集団免疫が獲得できないリスクもある。WHOは新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには、60%~70%の集団免疫の獲得が必要になるとの見解を示しているため、ワクチンの接種率が低くなれば、有効性の高いワクチンでも集団免疫の獲得には至らない可能性がある。
それでも相場の勢いが止まらない理由は、経済正常化の期待に加えて、追加景気対策の必要性が高まっているとマーケットが判断したからであろう。米労働省が4日に発表した11月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比24.5万人増と市場予想の46.0万人増を大きく下回った。また、米連邦議会では追加景気対策について協議が進展しているとの報道もあり、追加景気対策への期待感もここにきて相場上昇を後押しする材料になりつつある。
今後の注目ポイントは「待機資金」
いまの相場環境は、短期であれば景気の弱気材料(景気下振れリスクの高まり→追加景気対策への期待)、中長期であれば景気の強気材料(ワクチン供給→経済正常化)が好感されやすい「いいとこどり相場」となっている。このような状況をもたらしたのは、おそらく積み上がった待機資金(≒キャッシュ)の存在だろう。その待機資金の状況を把握するうえでひとつ参考になるのが米MMF(マネー・マーケット・ファンド)の残高だ。
米MMFは流動性の高い低リスク資産に投資するファンドで、リスク資産から一時的に逃避する際に使用されることが多い。ご覧のようにコロナ禍で積み上がったMMF残高は緩やかに減少しているとはいえ、依然としてコロナ前の水準を上回っている状況だ。このように待機資金が積み上がった状況を勘案すれば、世界株式市場は短期的な調整局面をこなしながらも、中長期でみれば経済の正常化を織り込むかたちで堅調に推移する可能性がある。
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