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米国の新型コロナワクチン接種状況と株式市場への影響
田中 純平
2021/01/06

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概要

米トランプ政権は、新型コロナワクチンの早期開発を支援する「ワープ・スピード作戦」によって、支援開始から1年未満で新型コロナワクチンの緊急使用許可までこぎつけた。しかし、新型コロナワクチンの接種ペースについては、目標を下回る状況となっている。株式市場への影響についてはどのように考えるべきか?



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足元の新型コロナワクチンの接種ペースは想定を下回る

トランプ政権は、昨年末までに米国民に対して新型コロナワクチンを2,000万回接種させることを目標としていた。しかし、米CDC(疾病対策センター)の発表によれば、新型コロナワクチンの接種は今年1月5日時点で約484万回にとどまっている。目標を大幅に下回った要因としては、ワクチンが供給されはじめた昨年12月14日以降、米国が休暇シーズンに入ってしまったことや、人手・財源不足、ワクチン接種の拒否などが挙げられる。

新型コロナワクチンの接種率は、集団免疫(多くの人が免疫を持つことで感染が広がりにくくなる状態)を獲得するうえで、極めて重要なファクター(要素)だ。米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、集団免疫を獲得するにはワクチンの接種率が70~85%に到達する必要があるとの見解を示している。1月5日時点の接種率は米国全体で約1.5%にすぎないため、集団免疫を獲得するまでには相当程度の時間がかかることが容易に想像できる。

 

注目すべきは今後数ヶ月の接種ペース

しかし、ファウチ所長は今年1月3日のTVインタビューで、接種ペースは過去3日間で150万回(1日当たり平均50万回)に加速していると述べ、米国が集団免疫を獲得するのは今年夏から秋にかけてとの見解を示した。また、1月20日に就任予定のバイデン次期米大統領は、就任100日で少なくとも1億回(1日当たり平均100万回)の接種を目指すと表明している。つまり、集団免疫を予定通り獲得できるかどうかは、(足元の状況ではなく)今後数ヶ月の接種ペースがカギを握ることになる。

株式市場では、(集団免疫の獲得を前提とした)経済の正常化期待を背景に株高が続いている。だが、接種ペースの鈍化→集団免疫の獲得時期の後ズレ→2021年度の業績下振れ、となれば、株高トレンドに水を差すことになりかねない。足元の緩慢な接種ペースは過大視すべきではないが、今後数ヶ月の接種ペースの状況は要注目だ。


田中 純平
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系運用会社に入社後、主に世界株式を対象としたファンドのアクティブ・ファンドマネージャーとして約14年間運用に従事。北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードの受賞経験を誇る。ピクテ入社後はストラテジストとして主に世界株式市場の投資戦略等を担う。ピクテのハウス・ビューを策定するピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)の参加メンバー。2019年より日経CNBC「朝エクスプレス」に出演、2023年よりテレビ東京「Newsモーニングサテライト」に出演。さらに、2023年からは週刊エコノミスト「THE MARKET」で連載。日本経済新聞やブルームバーグではコメントが多数引用されるなど、メディアでの情報発信も積極的に行う。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


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