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- 米バイデン政権「ブルーウェーブ」の死角
1月5日の米ジョージア州における上院決戦投票の結果、米民主党が大統領選と上下両院を制する「ブルーウェーブ(青い波)」となった。この結果、バイデン次期米大統領が掲げる積極的な財政政策が連邦議会で成立しやすくなるとの見方から、株式市場は上昇基調が続いている。しかし、民主党の法案が全て成立するわけではないので注意が必要だ。
議事妨害(フィリバスター)を阻止するには60議席が必要
上院の定数は100議席であるため、51議席あれば過半数を獲得したことになる。今回の選挙では民主党50議席、共和党50議席となったため、これだけではどちらも過半に届かないわけだが、上院の議決で票数が同数となった場合は、カラマ・ハリス次期副大統領が決定票を投じることができるため、実質的に民主党が過半を獲得したことになる。
しかし、上院では議員の発言時間に制限が設けられていないため、議会終了まで審議を引き延ばし、法案を議事妨害(フィリバスター)することが可能になる。これを阻止できるのが討議終結決議(クローチャー)であり、60議席以上の賛成を得る必要があるが、民主党の議席はこの60議席には及ばない。つまり、民主党の法案を通すためには超党派での合意が不可欠になる。
「財政調整措置」を使用すれば民主党単独で可決することも可能だが…
その一方で、予算決議において「財政調整措置」と呼ばれる制度を活用すれば、(歳入・歳出に関するものであれば)民主党単独で法案を通すことは可能になる。しかし、「財政調整措置」は一会計年度につき一度しか使用できないほか、民主党内での調整も必要になる。
バイデン政権下で「予算調整措置」を主導するのが、新上院予算委員長に指名された急進左派のバーニー・サンダース上院議員だ。サンダース氏は米メディアのインタビューに対し、「財政調整措置」を積極的に活用する方針を発表しており、新型コロナウイルス対策や景気刺激策に加え、インフラやクリーン・エネルギー政策などをまとめることに強い意欲を示した。
ここでカギを握るのが、民主党内における中道派のジョー・マンチン上院議員とキルステン・シネマ上院議員、ジョン・テスター上院議員の動向だ。「財政調整措置」においてあまりにも左派的な法案になってしまうと、中道派の民主党議員らが廃案に持ち込む可能性があるからだ。特にマンチン氏は石炭産地であるウェスト・バージニア州の上院議員であるため、気候変動対策を含めた法案については反対の立場を取りやすい。「財政調整措置」の発動には、民主党内における融和が不可欠になる。
1月14日にはバイデン次期大統領が追加景気対策案を発表予定
バイデン次期大統領は、1月14日に追加景気対策案を発表する予定となっている。報道では2兆ドル規模になるとも言われているが、予算の権限はあくまで連邦議会にあるため、次期大統領の発言よりも連邦議会の審議を見守る必要がある。分断された民主党をうまくまとめることができるか、バイデン次期大統領の手腕が試される。
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