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- 消費者物価の行方
消費者物価がじり高となっている。足下は通信費が物価を押し下げている一方、エネルギーが押し上げており、綱引き状態だ。ただし、4月以降は携帯電話大手3社が昨年3月に投入した新サービスの影響が解消されるため、生鮮食品を除くコア指数の上昇率は2%を超える可能性が強まっている。その後の鍵を握るのは、エネルギーなど国際商品市況と為替の動きになろう。
4月以降のコア消費者物価:国際商品市況、為替が当面の鍵を握る
2013年1月22日の『政府・日銀共同声明』では、日銀は「物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする」と表明、初めてインフレターゲッティングを導入した。この「安定的物価目標」に関して、日銀はコア消費者物価上昇率を基準にしている。つまり、2%の安定的な物価目標には、原則としてエネルギーを含むと考えなければならない。
ただし、「安定的」と断っている以上、一過性の要因でコア消費者物価上昇率が2%を超えたとしても、機械的に判断しないとの立場を日銀はとっている。さらに、2016年9月20、21日の決定会合では、『オーバーシュート型コミットメント』を採用、物価目標が「安定的に持続するために必要な時点まで」、イールドカーブコントロールを継続すると公約した。
3月のコア消費者物価上昇率は前年同月比0.8%だが、特殊要因が2つある(図表1)。1つ目は、昨年3月、携帯電話大手3社が投入した新サービスであり、これがコア指数を1.5%ポイント押し下げる要因になった。もう1つはエネルギーで、コア指数を1.5%ポイント押し上げている。つまり、この2要因は綱引き状態にあるが、新サービス導入から1年が経過する4月になれば、通信のコア消費者物価に対する影響は概ね解消されるだろう。従って、当面、コア消費者物価の鍵を握るのはエネルギーなど国際商品市況、そして為替の動向になると考えられる。
為替のインパクト:円安期待が資本逃避を招く可能性
時系列で見た場合、コア消費者物価に対するエネルギーの寄与度は概ね原油価格に連動してきた(図表2)。原油価格が現在の1bbl=100ドル近辺で推移する場合、今年一杯、エネルギーは消費者物価上昇率を押し上げることになるだろう。また、ウクライナ危機の影響などから原油や天然ガスなど国際商品市況が一段と上昇すれば、日本の消費者物価への影響はさらに長期化するものと見られる。
4月22日、コロンビア大学で講演した黒田東彦日銀総裁は、資源価格の上昇には「直接、金融政策では対応しない」と指摘した。国際市場で決まる資源価格は日銀がコントロールできないからだ。一方、資源価格の高騰が予想インフレ率を押し上げ、「賃金と物価のスパイラル的上昇が生じるリスクがある場合」、金融引き締めの可能性を示唆した。その上で、現状はそうした「可能性は高くない」との見解を示している。
確かに今の日本経済において、資源価格上昇によるインフレは富の国外への流出であり、賃金に反映されるわけではないだろう。ただし、日銀とFRBが正反対の金融政策を採ることで円安が進み、円安期待による資本逃避がさらに円安を招くシナリオには蓋然性がある。資源・原材料価格を企業努力で吸収するのは限界に近付きつつあると見られ、日本の消費者物価も本格的な上昇期に入る可能性は否定できない。
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