Article Title
最近の発言から、6月FOMCを解釈する
梅澤 利文
2019/06/26

Share

Line

LinkedIn

URLをコピー


概要

今日のヘッドライン6月20日号で、先のFOMCの公表内容の特色について述べ、米国の金融政策は利下げに舵を切ったことを指摘しました。ピクテでも、FRBの次の一手は利下げの公算が高まったと見ています。ただ、前回のレポートでは、どのような利下げになるか、述べていませんでした。そこで、最近のFOMCメンバーの発言などから想定される利下げの内容について述べます。



Article Body Text

パウエル議長講演:景気下振れリスクの高まりを認識、利下げの論拠を補強

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2019年6月25日、外交問題評議会(CFR)で講演し、経済の不確実性が高まり、入手するデータからは世界経済の強さに懸念が再燃していると述べました。パウエル議長の講演は先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)発表と重複する内容で、改めて、利下げ支持を示唆した格好です。

なお、先週のFOMC後、その他FOMC主要メンバーが公に金融政策についてコメントしましたが、内容には多少ばらつきも見られました(図表1参照)。

 

 

どこに注目すべきか:FOMC、FF先物、マイナス成長率、保険

今日のヘッドライン6月20日号で、先のFOMCの公表内容の特色について述べ、米国の金融政策は利下げに舵を切ったことを指摘しました。ピクテでも、FRBの次の一手は利下げの公算が高まったと見ています。ただ、前回のレポートでは、どのような利下げになるか、述べていませんでした。そこで、最近のFOMCメンバーの発言などから想定される利下げの内容について述べます。

まず、最近(6月FOMC後から直近)のFOMCメンバーらの発言内容を振り返ると、大半が利下げの必要性か、景気減速(逆風)に直面していることを認識しています。

例えば、パウエル議長をはじめ、クラリダ副議長、ブレイナード理事、セントルイス連銀ブラード総裁が、不確実性の高まりや、景気減速などを懸念しています。

反対に、利下げに消極的な発言を最近したのは、カプラン総裁や、バーキン総裁などです(図表1参照)。

次に、フェデラルファンド(FF)金利先物を目安に来年までの利下げ織り込み回数(1回0.25%と仮定)を確認すると、19年末までに2回、20年末までにさらに2回で合計4回、1%程度の利下げが見込まれています。過去の「継続的な」利下げ局面(図表2参照、赤線)では引き下げ幅の合計は概ね5%を超えていたことに比べると、小粒ですが、現在の低い利回り水準からすれば、それなりの引き下げと見られます。ただ、過去の継続的な引き締め局面では経済成長率がマイナスとなることに伴い利下げ幅を拡大させてきています。

反対に、98年は米国の経済成長はプラスながら、アジア通貨危機など外部環境の悪化を受け、予防または保険として利下げを実施しています。ブラード総裁が指摘する保険にはこの時の利下げイメージがあるように思われます。

景気認識についても、逆風(もしくは逆流)と表現されていますが、これは経済が前向き(少なくともプラス成長)なことから、米中貿易戦争などの影響がマイナス方向に影響していることを示唆しているとも見られます。少なくとも現段階では、FOMCの経済成長予想は2%程度となっています。

市場がほぼ織り込む7月の利下げをひっくり返すリスクは考えにくい一方、利下げは保険として実施されると見ています。したがって米中通商交渉の動向次第では、市場が利下げを織り込み過ぎている可能性に注意は必要と見ています。


梅澤 利文
ピクテ・ジャパン株式会社
ストラテジスト

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)


●当資料はピクテ・ジャパン株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。
●当資料に記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。
●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

手数料およびリスクについてはこちら



関連記事


米CPI、インフレ再加速懸念は杞憂だったようだが

注目の全人代常務委員会の財政政策の論点整理

11月FOMC、パウエル議長の会見で今後を占う

米大統領選・議会選挙とグローバル市場の反応

米雇用統計、悪天候とストライキの影響がみられた

植田総裁、「時間的に余裕がある」は使いません